ハイキングや登山をしていると、よくドキッとするような不思議な看板、ユーモアのある注意喚起看板に遭遇しますよね。この記事では筆者が見かけた看板の中でおもしろいもの・趣のあるものを随時紹介していきたいと思います。
頭の毛が三本?
山を汚す登山者は猿より頭の
毛が三本?
空き缶・ゴミ・良心は
持ちかえろうね
というこの看板、ハイキング中に何度か見かけたことがあります。写真は埼玉県・奥武蔵の丸山付近で撮影したものですが、調べてみると他県にも全く同じデザインや、デザインは異なるものの同じ文言の看板が存在しているようです。状態は良いのですが非常に古く、二〜三十年は経過しているように思われます。
初めてこれを読んだ時は、意味がわからなかったので調べました。「猿は人間に毛が三筋足らぬ」ということわざがあり、猿は毛が三筋(三本)足りないから、利口そうに見えてもそのぶん知恵が足りていないのだ、という意味なのだそうです。
看板の作成者はそのことわざを下敷きにし、山にゴミを捨てて行くような登山者は、人間よりも毛が三本足りないとされる猿よりもさらに三本の毛が足りないのではないか、つまり「猿よりも愚かではないか」と主張したかったのでしょう。なかなか辛辣な表現ですが、ゴミを捨てようかと思ってしまった人には何か刺さるところのある看板でしょう。
捨てないでね
あなたは
山と恋人を愛す人
山と良心を汚す人
ゴミも恋人も
捨てないでね
というこの看板は、武甲山の山頂で見かけたもの。展望広場に向かって右、温度計の隣にあります。
恋人、という言葉の登場が個人的にはやや唐突に思えます。「ゴミ」と「恋人」が同列に扱われているような響きも違和感がありますが、大切な恋人もゴミのように捨ててはいけない、という読ませ方を意図しているのでしょうか。意味はよくわからないものの、強烈な印象を植え付けられます。今風に言うと「クセが強すぎる」表現ですね。
何度読んでも、作成者の発想法や意図を完全に理解するのが難しい。しかし「ゴミ捨てるなよ」というメッセージの核心はしっかり届いたので、注意喚起看板としては成功しているのかもしれません。
「ゴミ・良心」というキーワードは、先に紹介した「頭の毛が三本?」とも共通しています。ステンシルテンプレートを使った手法も同じなので、製作者は同じ人のような気がします。
緑に萌えるもの
燃やすまい
山は緑に
萌えるもの
これは説明不要の、良い看板でしょう。「燃える」と「萌える」の韻が素晴らしいですね。
これも調べると愛媛県に全く同じ看板が、和歌山県に全く同じ文言・同じリスのイラスト・背景デザイン違いの看板が存在しているようです。発祥地が何処なのか、気になるところです。この看板の設置者は正体不明の個人啓蒙家ではなく、地方自治体となっています。
やめなさい!
ここでトイレをやめなさい!
住んでいる人に迷惑、水源をおせんする立ち入り禁止テープ無視しないように。
トイレある場所:
顔振峠、諏訪神社、高山不動、ブナ峠THIS IS NOT A TOILET, YOU WILL POLLUTE OUR WATER SUPPLY
Please use: Kaofuri-toge, Suwa Shrine,
Takayama Fudo Shrine, or Buna Pass
これは関八州見晴台に向かっている時、奥武蔵グリーンラインで撮影したものですが、地主の方が大変迷惑していたのだろうと思われます。確かにこの先は便利に使われてしまいそうな雰囲気がありました。
この看板ではトイレのある場所が示されているところが大変親切。英文も文法や表現が整っていて丁寧。しかし「顔振峠」は「かあぶりとうげ」と読むのがこの土地では一般的と思われるので、英文で”Kaofuri-toge”とされているのがやや謎ではあります。
ぜったいに入らない
告
この入口のクサリが掛けてある場合は
山の家館内外共に.
警備会社の赤外線
システムがセットし
てありますので.
ぜったいに入らないで下さい.
この看板は、特に不可解なことが書かれているわけではないのですが、非常に特殊な雰囲気があるので紹介しておきたい。クサリが掛かっている時は、何が何でも、とにかく絶対に入ってほしくない、入ったら絶対に許さない、という強い意思が感じられます。
そして、独特な改行ポイントや読点、「ありますので」という丁寧な言葉使い、「ぜったいに」というひらがなの柔らかさから、地主の方の切実な思い、やむにやまれぬ事情が強く伝わってきます。思わず「わ、わかった、事情はよく知らないが、とにかく入ったりしないから安心してほしい」と声を掛けたくなるような、そんな看板です。
どんな火もいやです
どんな火もいやです山はみどり好き
(2023年1月2日追加)この看板は2022年12月下旬、埼玉県日高市の高麗峠(巾着田の近く・メッツァ外周コース)で見かけたものです。五・七・五の、ストレートで良いメッセージですね。
文字デザインや配色がむかしの切手みたいで気に入ったのですが、眺めていて「日高町」という表記に驚きました。現在ここは「日高市」なのですが、町から市に切り替わったのは調べると1991年10月1日。つまりこの看板、少なくとも32年ほどはここにあることになります。
ほとんど文化財と言って差し支えない貴重な看板ですね。こういうものは新しいものに更新せず、このまま大事に残していってほしい気がします。