埼玉県・奥武蔵の伊豆ヶ岳から西武秩父線・吾野(あがの)駅に至る縦走コースの途上「中ノ沢ノ頭」の手前で高畑山(たかはたやま・695m)という低山を通過するのですが、ここに謎めいた地名(?)が記されており以前から気になっていました。
楢生の高畑山
山頂標識の近くにある道標に「ナローノ高畑山」という縦書きの文字列が見えます。初めて見た時はビックリしたのを覚えています。ここは「ナローノ」という謎のリゾート開発グループの敷地なのだろうか。西武グループなのか。同名の温泉でも近くにあるのか。いや、何かアパートの名前のようにも思える。「ハイツ高畑山」とか「エトワール高畑山」みたいな感じのやつ。
「飯能市上久通4-0-4 ナローノ高畑山404号室」みたいな住所は実在しそうな気がします(上久通・かみくづう、というのは高畑山近くの集落)。
しかしこの「ナローノ」は「楢生の」から来ているようです。「楢生」は「なろう」と読み、「楢」は木の「ナラ」。「ならお」が「なろう」に転じた。「楢生地区の高畑山」だから「ナローノ高畑山」。という説があります。
しかし地図を見てもこの付近に「楢生」という文字は見当たらないため、よそからやってきた私のようなハイカーには解読が難しいのではないでしょうか(近くには「林道楢生線」があることはあります)。
また「ナローノ」とあえて付け加えていることを考えると、この付近には「ナローノではない高畑山」もかつては存在したのだろうか、などと想像が膨らみます。
他にもあるおもしろ謎地名
こういう地名はとてもおもしろいですね。奥武蔵なら「ユガテ」や「スカリ山」などが不思議なカタカナ地名としてすぐに思い出されます。なお「ユガテ」は「湯ヶ手・湯ヶ天」から、「スカリ山」は「須刈山」から来ているという説があります(「巣狩山」説もあり)。
というより、この場合は漢字のほうが当て字かなとも思います。奥武蔵にはアイヌ語・朝鮮語由来と思しき不思議な地名が多い。「ナローノ」は「楢生の」という気はしますが、「ユガテ」や「スカリ」の漢字は後付けの可能性もあるのではないか。
高畑山の近くの伊豆ヶ岳についても「伊豆」とは無関係ではないかと私自身は思っています(天気の良い日に伊豆まで見えたから、という説がありますが、少し怪しい)。
余談ですが「ナローノ高畑山」に似た雰囲気の不思議地名として「コンサイス秩父槍ヶ岳」というものがあります。
手元に写真がないのですが、奥秩父の道なし山・秩父槍ヶ岳(1341m)のルート上には「(コンサイス)秩父槍ヶ岳」と手書きされた山頂標識があるのです。こちらは「(コンサイス)秩父槍ヶ岳」が標高1430mであり「コンサイス日本山名辞典」に記載されているピークがそれだから、という由来があります。