ハイキングコース紹介埼玉県の山

伊豆ヶ岳(いずがたけ):50mのクサリ場を楽しめる駅近の低山

伊豆ヶ岳ってどんな山?

伊豆ヶ岳(851m)を簡潔に紹介するなら、短時間でも濃密な体験を得られる山、と言えるでしょうか。西武秩父線・正丸(しょうまる)駅から山頂まで2時間足らずとアクセスが抜群に良く、高さ50メートル・斜度40度のクサリ場「男坂」が名物(巻き道の「女坂」もあるので初心者も安心して登れる)。山頂からの展望に派手さはないものの、自然は深い。「チャート」と呼ばれる、生物死骸由来の堆積岩でできている山です。

伊豆ヶ岳山頂(2021年秋撮影)

伊豆ヶ岳山頂(2021年秋撮影)中央はチャートの岩

朝寝坊しても、伊豆ヶ岳単体であればのんびり周回できるのは勿論、子ノ権現(ねのごんげん)という有名な寺を経由して吾野駅に至る縦走コースや、武川岳から二子山を経て芦ヶ久保駅に至るコースに組み立てれば、アップダウンの多いハード目なハイキングをたっぷり楽しむこともできます。駅近で、短時間にも長時間にも対応し、魅力的なクサリ場があり、植生も良い。これで人気が出ないわけがなく、週末や祝日は多くの人で賑わいます。できれば平日を狙いましょう。

「伊豆ヶ岳」という場違いな名前の由来は、ここから伊豆が見えるからという説、柚の木が生えていたからという説(柚ヶ岳)、湯が出ていたからという説(湯津ヶ岳)、アイヌ語に由来する説など、様々あるようです。本当のところは、今となっては誰にもわかりません。

主な登山コースとアクセス情報

西武秩父線・正丸駅を出てすぐ右にある急峻な名物階段を下り、ガードをくぐってしばらく舗装路を歩きます。巨石のある馬頭尊(馬頭さま)の分岐で左に行くと、五輪山を経由して伊豆ヶ岳に至ります。五輪山はベンチのある休憩に適した小ピークで、目の前にそびえる「男坂」に備えて装備点検をするのに都合が良いです。

■ 伊豆ヶ岳周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)

馬頭尊の分岐で林道を右に進み、一度正丸峠に上ってから五輪山に南下するルートもあります。正丸峠には「奥村茶屋」という立派な食事処があり、店内からの見晴らしが良いです。

馬頭尊の分岐

馬頭尊の分岐

伊豆ヶ岳の山頂までは結構あっという間に着いてしまうせいか、先にも書いたような縦走路に組み込む人が多いようです。子ノ権現を目指すコース(正丸駅・伊豆ヶ岳・古御岳・高畑山・中ノ沢ノ頭=イモグナの頭・天目指峠・子ノ権現・浅見茶屋・吾野駅)は約12.5km、5時間30分程度の行程で、いくつもの小ピークを超える起伏の激しさで人気。ただし浅見茶屋から先は車道歩きがやや長い。武川岳・二子山を経て芦ヶ久保駅をゴールとするコースは終盤まで山道なのが良いです。

私が歩いた伊豆ヶ岳

伊豆ヶ岳は何度となく歩いています。山歩きをはじめてまもない頃、吾野駅までの縦走でクタクタになったのは良い思い出です。以後は、やはりクサリ場を目当てに訪れています。死亡事故も起きている岩場ですが、先行者が原因の落石にさえ気を付ければ、咄嗟にクサリを掴めるルートを登っていけるので、岩慣れするための練習場所としては非常に良いと思います。

伊豆ヶ岳の男坂(鎖場)

伊豆ヶ岳の男坂(鎖場)

鎖は三本垂れており、登るたびに違うホールドを探したり、降りる練習もよくやりました。鎖を掴んで力任せに登りきることもできるらしいのですが、それだとスキルが身に付かないと思い、どうすればより安全に、かつ最小の体力で登っていけるのだろう、と考えながら何度も登りました。坂からの眺望も、山頂からより良いです。

伊豆ヶ岳の男坂(鎖場)

伊豆ヶ岳の男坂(鎖場)

馬頭尊からの「泣き坂」は巨木の根が露出した、荒々しく鬱蒼とした道で、急登ではないものの厳しさはあり、一気に異世界に突入していく印象が強い(SF映画に出てくる時空間ワープのためのワームホールのようだ、と言ったら大袈裟か)。それもあって、体力も気力も充実していないけれど山には行っておきたい、という日は伊豆ヶ岳に足を運ぶことが多いです。

伊豆ヶ岳(泣き坂)

伊豆ヶ岳(泣き坂)

男坂を登り終えてからも岩場は続き、山頂付近では東側に展望が開けています。大展望というわけではないのですが、広葉樹が自然な日陰を作ってくれるので食事休憩に適しています。しかし山頂で食事時間になることは少なく、なっても落ち着ける場所はすでに先約済みだったりするので、私はここでちゃんと食事をしたことがありません。

伊豆ヶ岳山頂

伊豆ヶ岳山頂

とにかくチャートという岩が魅力的。あまり多くの時間はないけれども、岩と戯れたいと思った時にはおすすめの山です。

伊豆ヶ岳山頂

伊豆ヶ岳山頂

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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