ハイキングコース紹介埼玉県の山

丸山:奥武蔵屈指の大パノラマとシャンゼリゼのような大林道を楽しめる駅近の山

丸山とは

丸山(まるやま)は奥武蔵、埼玉県秩父郡横瀬町にある標高960mの中強度ハイキングに向く低山です。西武秩父線・芦ヶ久保駅(あしがくぼ)から歩いて登ることができ、山頂の展望台は人工の構造物であるものの、そこに拡がる大展望は奥武蔵では一二を争うほどのスケールと言っても過言ではない、と個人的には感じています。

丸山展望台からの眺め

丸山に至る登山道は、芦ヶ久保駅から上る時の「丸山南東尾根コース(矢越尾根)」ならよく整備されており、杉林の中の幅広の堂々とした尾根道が圧巻です。芦ヶ久保駅から丸山山頂までは約3時間。極端なアップダウンがなく、ハイキング初心者の方がたとえば日和田山のような山からもう少し運動強度の高い山に登りたい、という時などに最適。駅近ですが登り甲斐のある山です。

丸山へのアクセス情報

最寄り駅は西武秩父線・芦ヶ久保駅。登山コースは少なくとも4つ考えられます。まずは芦ヶ久保駅と丸山を往復するピストンルート。次に丸山から大野峠を経由し赤谷(あかや)集落に至り、芦ヶ久保駅に戻る周回ルート。さらに丸山から西の日向山(ひなたやま)に下り、やはり芦ヶ久保駅に下る周回ルート。そして丸山から秩父市の金昌寺まで歩き、バスで西武秩父駅に至るルートです。

■ 丸山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)

この記事では芦ヶ久保駅を出発、丸山から大野峠を経て赤谷集落に降りたち、芦ヶ久保駅に戻ってくる周回ルートを筆者の歩行記とともに紹介します。

私が歩いた丸山

丸山南東尾根コースで丸山へ

まずは芦ヶ久保駅から丸山山頂まで、筆者が2023年1月中旬に歩いた時の様子をご紹介します。遅めのスタートでも良かったのですが、早朝に到着してしまいました。日照を考えるともう少しゆっくり出発しても良いかもしれません。駅前の階段を降り、国道299号を左折します。

芦ヶ久保駅前の階段

丸山への登山口までは少しわかりにくいところがあります。はじめに「あしがくぼ果樹公園村・農村公園」方面に向かいます。下の写真の道を直進です。

農村公園への標識

あしがくぼ果樹公園村では食事処(写真右)、その右側にトイレがあります。しばらくは舗装路を急登します。ここは結構な勾配です。

あしがくぼ果樹公園村

ここがわかりにくいところ。車道をそのまま進んでも丸山登山口に至るのですが、左折して山道へ入ってみましょう。日向山の山腹にある、横瀬町農村公園に至る道です。

農村公園に至る山道

少し鬱蒼とした感じの道です。長くは続きません。

農村公園に至る山道

下の写真で見えている赤い構造物は、農村公園のローラー滑り台です。筆者はまだ乗ったことがありません。こちら側に下山する時は挑戦してみてはどうでしょうか。

農村公園

農村公園を出るとふたたび車道へ上がります。

農村公園

車道はやがてT字路になるので、ここを右折します。少し難しいのはここまで。案内板が出ているので、残りは迷わないでしょう。

丸山登山道の手前

この区間は武甲山を間近に大きく望めるのが特徴です。このあたりでザックのスタビライザーを調整するなど、本格的な身支度をしておきましょう。

丸山登山道の手前

丸山への本格的な登山道はここからです。この先にある民家で飼われている犬さんに吠えられることがあるので、びっくりすることがあります。たまに野菜も売られています。

丸山登山道

獣避けの柵があるので、自分で開いて閉じます。すぐ近くに畑があるので、鹿などが入ってきたら食べられてしまいます。

丸山登山道

最初は細い山道です。この日はそこまで寒くなかったのですが、日当たりが少ない道なのか霜が降りていました。

丸山登山道

さて、やがて広い広い尾根道に出ます。これは「丸山南東尾根コース(矢越尾根)」と呼ばれており、よく整備された、実に広々とした登山道です。木漏れ日が美しいですよ。

丸山南東尾根コース(矢越尾根)

壮観です。私はこの道を心の中で「奥武蔵のシャンゼリゼ」と呼んでいます。しかしこう見えていつも意外なほど人通りが少なく、この日も貸し切り状態で歩きました。地元の小学校の遠足などでは子供たちが喜んで歩きそうな道です。

丸山南東尾根コース(矢越尾根)

この尾根道はやがて急登になります。このルートはほぼアップダウンがない直登。牧歌的なイメージのある丸山ですが、厳しいところは厳しい。

丸山南東尾根コース(矢越尾根)

2回ほど車道との出合があります。これは丸山林道。丸山は山頂近くまでクルマでも行けます。ここは直進します。

丸山登山道

低山ながら朝晩はかなり冷えるのか、この日は登るにつれて立派な霜柱が続々と立っていきました。

丸山の霜柱

踏んでもまったく壊れないほどカチカチに凍っています。

丸山の霜柱

かなり綺麗だったのでここで写真タイム。日当たりの良い時間帯だったらもう少しきれいに撮れたかもしれません。

丸山の霜柱

今度は遊歩道を渡り、木段の道へ。ここから「埼玉県県民の森」になります。

丸山登山道

丸山山頂に至る道にはショートカットもあるのですが、今回はここまで登ってから東に向かいます。東屋があり、このむこうには中央広場管理事務所と学習展示館、デイキャンプ場などがあります。

東屋前

尾根道を少し歩き、木段を下りるとトイレがあります。ただし冬期はこのトイレを含め、県民の森は概ね2月末まで閉鎖されているので使えません。

丸山手前のトイレ

トイレの右手に、さらに木段が続きます。ここは丸山手前の最後の尾根道になります。このあたりから体力を使います。

丸山手前の最後の木段

雰囲気の良い雑木林の道です。風通しが良いので少し肌寒く感じるかもしれません。

丸山手前の最後の木段

最後の激坂を登りきると、丸山山頂で立派な展望台がお出迎えしてくれます。以前は灰色の外壁でしたが、数年前にきれいな白に塗りなおされました。

丸山展望広場

この時はまだ陽が当たっていなかったのですが、展望広場には広々としたベンチが4つ5つほどあり、食事休憩に最適です。余裕を持ってお湯を沸かして温かい食べ物を作れたりするので、超快適です。お昼にここに到着するように組み立てたほうが良いですね。芝生でゴロゴロするのも良し。

丸山展望広場

展望台は3階建て。登ってみましょう。

丸山展望広場

丸山展望台の屋上です。ここにはNikon製の超望遠双眼鏡が数台あり、奥秩父の山々や横瀬の町並みなどをどアップで眺められます。接眼レンズにスマホを当てて写真を撮っている人も多く見かけます。非常に性能の良い双眼鏡なので、是非使ってみてください。勿論無料です。

丸山展望広場

ここからの武甲山の眺めは圧巻です。中望遠レンズで撮ってみました。据え付けの双眼鏡を使えば採掘作業中のトラックまで見ることができます。

武甲山

こちらは武甲山の入口である横瀬駅近くの様子です。煙が上がっている石灰工場は、武甲山登山の際に近くを歩く方も多いと思います。奥は西武秩父駅方面。

横瀬の町

埼玉県唯一の日本百名山、両神山も素晴らしくよく見えますし、八ヶ岳連峰も見えます。冠雪しているのは赤岳から横岳にかけてでしょうか。

八ヶ岳(赤岳)と両神山

群馬の榛名山や赤城山も見えます。丸山展望台からのこの大パノラマは、奥武蔵エリアでは一二を争う眺望と言っても過言ではなく、960mの低山ながら大きい達成感と満足感を得られることでしょう。

丸山展望台の下にある案内板には、次のように書かれています。ご参考にされてください。

標高960mの丸山山頂からは、丹沢、奥多摩、奥秩父、秩父盆地、関東平野北部及びその背景の北アルプス、八ヶ岳連峰、中越山地等が遠望できる。

この地点からは、三畳紀(約2億5千万年前〜約2億年前)の石灰岩体である武甲山をはじめ、中生代(約2億5千万年前〜6,600万年前)の付加体(海洋プレートが海溝で大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレートの上の堆積物がはぎ取られ、陸側に付加したもの。)からなる奥秩父の山々、新第三紀(約2,300万年前〜258万年前)の海成層(海底に堆積してできた地層)からなる秩父盆地、第四紀(258万年前〜)の堆積物からなる河成段丘群など秩父盆地周辺の地形・地質を一望できる。

同時に、温暖帯から亜寒帯まで多様な森林植生の様子や、石灰岩の採掘が進む武甲山の山容、植林地や農地、集落の広がりといった秩父の土地利用についても展望できる。

では下山します。この日は「あしがくぼの氷柱」イベントを見て帰りたかったので、日向山に下ってから芦ヶ久保駅に向かうことにしました。往路を戻ります。

丸山南東尾根コース(矢越尾根)

丸山南東尾根コース(矢越尾根)には見落としがちですが、大日如来の石像があります(下山中に振り返って撮影)。この近くに日向山への分岐路があります。

大日如来

丸山から大野峠経由で赤谷へ(丸山〜赤谷コース)

しかし日向山については別記事で紹介することにして、この記事ではここから、丸山から大野峠経由で赤谷に至るコースの模様をお伝えします。なおここから2021年11月初旬の写真になります。丸山山頂の展望台前から、西に向かいます。マジックで「←大野峠」と誰か書いてくれています。はじめての方は確かにこれがないとわかりにくいかもしれません。

丸山展望広場前

右側にフェンスのある道を行き、電波塔の前を通ります。

大野峠への道

やがて白石峠への分岐に至り、右折すると「大野峠パラグライダー滑走場」に出ます。ここも眺望が大変良いスポットです。

パラグライダー場

この木段を急下降すると大野峠です。

大野峠への道

大野峠には、とりたてて見るものはありません。ここで白石峠・刈場坂峠・赤谷集落に至る山道・林道丸山線(丸山山頂付近までの区間は数年前から通行止め)が交わっています。今回は赤谷に降ります。

大野峠

赤谷へのジグザグの尾根道は急下降で、なかなか足にこたえます。膝に不安のある方はトレッキングポールを持ってきたほうが良いでしょう。

赤谷に至る道

この道はあまり整備されておらず、枯れた巨木やゴロゴロ岩が頻出します。前半の矢越尾根とは対照的です。

赤谷に至る道

技術を要するほどではないものの、だいぶ荒れた道という印象です。

赤谷に至る道

赤谷集落に出ました。谷に少しだけ国道299号線が見えています。奥には両神山がまだ見えていますね。

赤谷集落

赤谷集落から芦ヶ久保駅までは下り基調の道ですが、2kmほどあってやや退屈な車道歩きになります。丸山山頂から芦ヶ久保駅までは約2時間かかります。

国道299号

このコースも勿論悪くないのですが、個人的には日向山を経由して芦ヶ久保駅に下るほうが車道歩きが少ないぶん、やや好みではあります(日向山も展望が楽しめる良い山です)。運動強度的にはどちらも大きく変わらない印象です。

なおこの芦ヶ久保〜丸山〜大野峠〜芦ヶ久保周回コースは距離約9.5km、所要時間は5時間弱。危険な箇所も特になく、心地良い疲労と大きい達成感を味わえると思います。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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