日和田山ってどんな山?
ハイキングをはじめてみたいのだが、どこか連れて行ってくれないか。という知人がいたとして、私なら最初にどの山に案内するだろうか。
奥武蔵エリアなら、たぶん日和田山がファーストチョイスになると思います。わずか305mの低山で、駅を出発してたった1時間で大展望の金刀比羅(ことひら)神社に着いてしまう。そこから山頂は10分足らず。
神社前には、どう登ろうかと思案するのが楽しい岩場・男坂もあります。男坂がイヤだというなら女坂を案内できるし、体力がない人でも神社までは何とか行けるでしょう。逆にもっと歩きたいと言われたら、物見山から武蔵横手駅まで。あるいは巾着田・高麗峠を経て天覧山・多峯主山(とうのすやま)と案内することもできます。日和田山を周回するだけでも飽きないでしょう。
駅近であり、短時間で山のエッセンスを味わえて、おもしろい岩場もある、という点では正丸駅スタートの伊豆ヶ岳も似ていますが、日和田山は危険な箇所がほとんどないので、より初心者向きでしょう(「男岩・女岩」というクライマーに人気の岩壁もありますが、それは除く)。
日和田山は登山家の故・田部井淳子さんが若い頃に岩場でトレーニングしたり、晩年のリハビリ中に好んで登った山としても知られています。
主な登山コースとアクセス情報
日和田山の最寄り駅は西武池袋線の高麗(こま)駅。2つ隣の飯能駅は、急行や特急が停まるので便利。登山口近くの高麗本郷の信号では飯能と結ぶバスの停留所もあります。高麗駅を出て左折し、踏切を渡って巾着田を目指して歩いていくと、日和田山方面への看板が出ているため道に迷うことはないでしょう。駅から山頂までの距離は約2km。
■ 日和田山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)
登山口には駐車場(有料)があり(田部井淳子氏の記念碑が設置されている)、立派なトイレと飲料の自販機もあります。高麗本郷の信号前にはセブンイレブンもあり、飲み物や行動食の調達に便利。巾着田の近くにはカフェや麺類の店が数件あります。下山後の食事は飯能まで繰り出すのも良いアイデア。
日和田山単体で時間を持て余す場合は、巾着田の散策を組み合わせるのも良いし、巾着田・高麗峠・天覧山・多峯主山と縦走するのも良いでしょう。健脚なら多峯主山から柏木山・龍崖山へとさらに足を伸ばすこともできます。反対に日和田山から物見山・北向地蔵方面に尾根道を歩き、武蔵横手駅をゴールとしたり、物見山・鎌北湖・北向地蔵と周回してくる選択肢もあります。
日和田山山頂も金刀比羅神社前も、お昼時は(特に土日休)混み合います。西へ縦走する場合は北向地蔵、天覧山方面へ縦走する場合は高麗峠の先にある「ほほえみの丘」が大休止におすすめ。
私が歩いた日和田山
早朝の日和田山は登山道に入るやいなや、野鳥の声が賑やか。高麗川の向こうの多峯主山もそうなのですが、バードウォッチングを楽しめる絶好の山なので、私はここに双眼鏡を持ってくることが多いです。人里がごく近いのに野鳥の数が尋常ではありません。
男坂の岩場は、失敗しても大怪我をしないような高さの岩が多いので、人が少ない時にあえて難しそうな岩を見つけてよく練習したものです(小さい岩も登れずに立ち往生している気の毒な人と思われたかもしれない)。
岩が恋しくなった時、日和田山は伊豆ヶ岳と並んで手軽に岩成分を補充できるのがありがたい。斜面は伊豆ヶ岳ほど急ではないものの、変化に富んでいるのでむしろ日和田山のほうが退屈しない人もいるのではとも思います。「チャート」という生物死骸由来の堆積岩でできた岩をじっくり観察できます。日当たりの良い男坂では、ニホントカゲの姿もよく目にします。
金刀比羅神社からの眺めはやはり格別で、サーモスの「山専用ボトル」で持ってきたお湯で淹れたコーヒーを飲みながら(ここはバーナーで湯を沸かせる感じのスペース・雰囲気ではない)、双眼鏡で巾着田の様子をのんびり眺める時間は至福。晴れた日には西武ドームもスカイツリーもよく見えます。
金刀比羅神社から宝篋印経(ほうきょういんとう)のある山頂に至るまでの短い道は、木の根の露出した急登とゆるやかな巻道があります。山頂からの眺めはそれほど良くはない(悪くもない)ですが、そこそこの開放感はあります。しかし頭の中ではなぜか山頂=金刀比羅神社という図式が出来てしまっています。山頂は狭めで人も多いため、長時間いたことがないからかもしれません。
武蔵横手駅をスタートして高麗駅にゴールしたこともありますし、天覧山・多峯主山を経て柏木山へも何度か歩いています。急登も急下降もないので、膝を痛めている時でもただ長距離を歩いて体力を維持したい時に、よく訪れていました。登山道も山頂まで一本というわけではなく、周回も楽しめます。道に迷って日向登山口に出てしまったことも(高麗川・鹿台橋に合流します)。
日和田山は、初心者向けの日帰りハイキングとしては当然ながら超人気の山ですが、良い意味で不親切なセクションもちらほらあり、駅からの近さを考えると意外なほど自然が深い場所もあります。だからこそ人気の山なのかもしれません。