ハイキングコース紹介埼玉県の山

宝登山:大観光地ながら満足感が高い低山ハイキングコース 直登して長瀞アルプスを下ろう

宝登山とは

宝登山(ほどさん)は秩父鉄道・長瀞(ながとろ)駅から歩いて登れる標高497mの低山です。登山口から林道を歩く・林道を横切りながら直登する・宝登山ロープウェイで登ってから山頂付近を周遊する、そして長瀞アルプスを経てお隣の野上駅へ… と、おおむね3つのパターンで楽しめるハイキングルート。山頂からの展望は素晴らしく、冬はロウバイ、春は梅の花を楽しめます。

宝登山頂

宝登山という名は、一般的には火を制御すると言われる「火産霊命(ほむすびのかみ)」に由来すると言われています。宝登山神社奥宮の狛犬は三峯神社のそれと同様、犬ではなく「狼」で(写真下)、この狼が日本武尊を猛火から救ったとされています。それゆえ「火止山」と名付けられ、後年「宝登山」に変わったとのこと(参考:打田鍈一著「埼玉県の山」)。

宝登山神社奥宮の狛犬

しかし、です。私はこの説には完全には納得できないところがあります。小学生の頃、私の友達に神社の息子がいて(彼は神道系の大学に進学してその後神主になった)「ほど」というのはまず女性器の意味であり、地名に「ほど・ほと」が付いていたら、それは窪地や湿地を意味するのだ。「おほとさま」って言うのだ。と私に教えてくれました。

しかし「ほと」の「ほ」は同時に「火」との関係もあるらしく、語源は大変興味深いものがあります(どちらが正しいというより、火と女性器は同じ世界に属するのかもしれない)。宝登山の山頂付近は、昔からそうだったのかは不明ですが台地的なピークなので、鞍部ではないもののある意味「窪み」的な雰囲気もないではありません。

それはさておき、山頂付近には「宝登山小動物公園」もあり、さらに長瀞駅すぐそばには「ジオパーク秩父」に含まれる荒川沿いの壮大な「岩畳」があり「長瀞ラインくだり・周遊船」も楽しめます。宝登山〜長瀞アルプス〜野上駅コースは3時間半ほど(距離8.5km)と短めなので、登山前に90分〜2時間ほど岩畳付近を観光していくのもおすすめです。動物園も見るならプラス60〜90分。

宝登山へのアクセス情報

宝登山の最寄り駅は秩父鉄道・長瀞駅。西武秩父駅と連絡できる御花畑(おはなばたけ)駅から約20分。宝登山に登ってから長瀞アルプスを下る場合、長瀞駅の隣の野上駅に辿り着きます。

■ 宝登山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)

遠方から来られる方にとっては、西武秩父駅や熊谷駅からはちょっと遠いな… と思われるかもしれませんが、歩行時間が短めなので意外と余裕を持てると思います。個人的には「長瀞の岩畳」とライン下りや周遊船を組み合わせるのはかなりのオススメ。

ただし秩父鉄道とその系列会社が力を入れている大観光地なので、週末や春・ゴールデンウィーク・夏休みなどは大変込み合います。長瀞ライン下りも楽しむなら平日の早朝が良いです。その後に宝登山に向かうのが良いでしょう。

私が歩いた宝登山

ここからは筆者が2023年3月下旬、実際に宝登山を歩いてみた日の模様をお伝えします。この日は天気がいまひとつで、宝登山の後は未体験だった宝登山小動物公園と宝登山ロープウェイに向かったのですが、この記事の後半では2021年11月に歩いた長瀞アルプス〜野上駅までのおすすめコースも併せてご紹介します。

しっかり歩きたいなら直登コースを

長瀞駅前のロータリーからまっすぐ伸びる広い車道沿いに歩いていくと、表参道に白い大鳥居が目立ちます。沿道にはお土産屋さん、レストランも多数あります。立派な桜並木です。

白い大鳥居

道はやがて宝登山ロープウェイの山麓駅方面(左)と神社方面(直進)に分かれます。歩いて登るなら神社方面へ。ロープウェイだと5分で山頂まで行けます。岩畳観光で時間を使いすぎた時など乗ってみるのも手かもしれません。

宝登山ロープウェイとの分岐

まずは宝登山神社に参拝していきます。それほど時間はかかりません。

宝登山神社

創建の歴史は西暦110年まで遡ることができ、1874年(明治7年)に完成した大変立派な神社です。火災・盗難・諸難よけのご利益があるそうです。

宝登山神社

神社を右手にして直進すると登山口があります。少しだけ車道歩きですが、すぐに未舗装の林道になります(クルマは通りません)。

宝登山登山口

この分岐では左折するとロープウェイ山麓駅に辿り着きます。ここは右へ。

宝登山登山道

さて、ゆるやかな勾配の林道をこのまま歩いていっても良いのですが、やや単調な道ではあるので、下の写真のようなピンクリボンを見かけたら山道に入っていくのが個人的にはおすすめです。林道の巻道よりもやや体力は必要ですが、山歩き感はこちらのほうが高いです(分県登山ガイドでは紹介されていません)。

宝登山登山道

わりと急登ですが、奥武蔵の低山をよく歩かれている方ならこのくらいが運動にもなってちょうど良いと感じるかもしれません。

宝登山登山道

道の状態は非常に良好です。山頂までに一汗かきたい方はこちらのほうがやはり良いですね。

宝登山登山道

途中で3回ほど林道を横切ります。林道は山腹をうねうねとゆっくり巻いていて、この山道はまっすぐ山頂まで登っていくわけです。

宝登山登山道

ピンクリボンが随所にあるので迷わないと思います。

宝登山登山道

最終的には宝登山神社奥宮に至る階段の近くに出ます。この日はたいやき・大判焼きの出店のあるところに出ました。

宝登山登山道

これが宝登山神社奥宮前の階段。奥宮にはこの階段からでなくとも、林道経由で山頂に行ってから立ち寄ることもできます。

宝登山神社奥宮

せっかくなので階段を登っていきましょう。

宝登山神社奥宮

宝登山神社・奥宮に着きました。開放的でありながら木々に守られてもいる感じです。

宝登山神社奥宮

歴史を感じさせる、おもむきのある枯れた雰囲気の神社です。

宝登山神社奥宮

これが問題の狛犬。三峯神社の狛犬同様、犬ではなく狼です。一体は口を開き、もう一体は閉じています。実に素晴らしい狛犬で、これは絶対に見ておいたほうが良いでしょう。

宝登山神社奥宮の狛犬

奥宮の手前には売店があり、ロウバイのお香や冷たい飲み物、殻付きアーモンドやお菓子などを売っています。ここのおかあさんが気さくな良い方で、秩父の天然水とアーモンドを買って休憩しました。また西武線沿線でしか手に入らないと思っていた熊鈴も売っていましたよ。是非寄ってみて下さい。

宝登山神社奥宮の売店

奥宮から3分ほど歩くと宝登山頂です。コルではなく平たいピークなのですが、「ほど」の名と関係があるのかどうかやはり気になります。

宝登山頂

この日は天気が悪かったのですが、この山頂は展望が素晴らしいです(後半で良い天気の日の写真をお見せします)。大きいベンチが3つ4つほどあり、広いので休憩適地。

宝登山頂

山頂は1〜2月ならロウバイ、3〜4月なら梅が見頃です。3月末のこの日は残念ながらどちらもタイミングが合わず。

西ろうばい園

ロウバイの花がちょうど咲き終えた頃でした。しかしロウバイのピーク時、特に週末なら大変な混雑になります。

ろうばい

長瀞アルプスへ

さて、ここからは2021年11月に宝登山を訪れた時の写真を交え、長瀞アルプスから野上までの模様をお伝えします。まずは山頂の様子をもう一度。宝登山頂は美しい雑木林なのです。

宝登山頂

この日は大変な好天で武甲山がバッチリ見えました。

武甲山

両神山もくっきり見えます。肉眼ではこのくらいのサイズ感になります。展望が良いだけでなく、秋なら照葉樹のおかげで良い感じの日陰になるので休憩には本当に良い場所ですね。

両神山

さて、長瀞アルプスに下っていきます。山頂からの裏参道は長い木段で、200段ほどもあります。

長瀞アルプス

下り終えてから木段を見上げたところです。

長瀞アルプス

長瀞アルプスはとにかく木漏れ日が美しい道です。

長瀞アルプス

途中で林道本山根線に合流するのですが、その後はふたたび雑木林の尾根道。心地よい風が吹き抜ける道で、気持ち良さは特筆すべきものがあります。癒やし系の道ですよ。

長瀞アルプス

長瀞の岩畳を思わせる岩石も随所に見られます。なお一部は私道になっており、登山道維持協力費として100円を入れる箱があるので、小銭を用意しておきましょう。

長瀞アルプス

細い沢沿いの道を下ると、萬福寺(まんぷくじ)のある登山口に出ます。

長瀞アルプス

登山口から野上駅までは約20分の車道歩きになります。この車道自体は面白みに欠けるのですが、それでも長瀞アルプスは歩いてみる価値のあるルートです。野上駅から電車でまた長瀞駅に戻って、岩畳付近をあらためて散策したり、わらじカツ丼やくるみそばなどの秩父グルメを楽しんで帰るのも一興です。鮎を使った料理を出す店もあります。

野上駅への道

はじめて宝登山に向かった時、私は「人が多そうな観光地だし、標高も高くないし、距離も短いし、楽しめるのかな?」と若干懐疑的でした。しかし登山前に立ち寄った荒川の岩畳は絶景で(伊豆大島などが好きな方は絶対に気にいると思います)、宝登山頂の展望も格別。長瀞アルプスは歩いていて大きいヒーリング効果を感じ、結果的には大満足だったのを覚えています。

決して退屈することはないと思うので、未訪の方は是非一度行ってみてくださいね。おすすめです。いつ行っても何度行っても、退屈することはないと思いますよ。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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