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伊豆大島縦断ハイキング:大島公園から裏砂漠に入り地層大切断面に下りるちょっとマイナーなルート

伊豆大島ハイキングといえば、三原山頂口から短時間で気軽に歩ける「お鉢廻りコース」が最もポピュラーですね。大島ファンの筆者もこれまで何度もお鉢廻りをしています。しかし今年の1月は、大島北東部から南西部にかけて島を縦断してみることにしました。「テキサスコース」と「馬道コース」と呼ばれる道を含む、10〜12km程度のハイキングです。

伊豆大島縦断ハイキング:大島公園から裏砂漠に入り地層大切断面に下りるちょっとマイナーなルート

大島公園から裏砂漠に入り地層大切断面に下りるマイナーなコース

大島公園を出発し、テキサスコースから三原山の砂漠へ。火山礫上のウォーキングをゆっくりたっぷり堪能したあとは、馬道コースで中腹の樹林を下り「地層大切断面(バウムクーヘン)」にゴールするルートです。上の画像の赤線が、筆者が実際に歩いた軌跡です。この記事ではその日の模様をご紹介します。

最後にあらためてまとめますが、お鉢廻りも楽しみたい場合はプラス90分ほど見ておくと良いと思います

テキサスコースから裏砂漠へ

前日の夜10時に東海汽船の大型客船「さるびあ丸」で東京・竹芝桟橋を出発、伊豆大島には朝6時ちょうどに到着しました。早朝に着く客船のために用意される連絡バスに乗り、大島公園で下車しました(乗客は私ひとり。運転手さんありがとうございました)。15分弱の乗車で、支度をして歩行を開始したのは6時30分頃でした。

大島公園バス停

大島公園バス停からテキサスコースに入っていくのですが、看板があるので追っていくと基本的に迷いません。舗装路を5分ほど登っていくとコース入口の大きい看板が出迎えてくれます。

伊豆大島・テキサスコース

ここを歩く人は多くないのでしょうか、道はあまり良くありません。しかし極端に悪いところもなく、ハイキング初心者の方でも全く問題なく歩けるコースだと思います。

伊豆大島・テキサスコース

30分ほど歩くと、いちど大島一周道路に出ます。これを渡ってテキサスコースを歩き続けます。大島公園から車道でここまでやってくることも、もちろんできます(遠回りになり、ハイキング的にはあまり面白みはありません)。

伊豆大島・テキサスコース

テキサスコースの前半は低木の樹海的な雰囲気です。軽い登りで、このセクションが大体30分くらい続きます。

伊豆大島・テキサスコース

樹林を抜けるとやがて黒い砂礫、火山砕屑物であるスコリアの地面が顕わになってきます。

伊豆大島・テキサスコース

三原山が見えてきました。ここから先は、ひとまず三原山を目指して歩いていけば良いのですが、たまにどの道を歩いて良いのかわからなくなる箇所はあります。その場合は、一定間隔で杭が打たれているので、それを目印にすると良いでしょう。

伊豆大島・テキサスコース

テキサスコースの後半では、このような奇岩の姿も楽しめます。このあたりは、地図上では奥山砂漠と裏砂漠北側の中間地点くらいです。標高は420mほど。

伊豆大島・テキサスコース

真っ黒なきれいな砂漠です! このあたりになると、雰囲気は完全に裏砂漠。濃霧の日は裏砂漠でも道に迷うことがあると聞くので、コンパスは持っておいたほうが良いかもしれません。

伊豆大島・テキサスコース

道標はほとんどないコースですが、ここだけ立派な道標がありました。これによると大島公園からこの地点までは3.3km。右に行くと大島温泉ホテル。まっすぐ行くと三原山火口(お鉢廻りコース)方面。左折すると櫛形山方面。私は櫛形山に行って、三原山の南に回るので今回は左折します。

伊豆大島・テキサスコース

ところでテキサスコースは何処から何処までを指すのか。ここを右折して大島温泉ホテルに至るまでの道を指すこともあれば、この道標までを指すこともあるようです。

櫛形山からカルデラ巨石群・赤ダレへ

道標で左折し、櫛形山(くしがたやま)を目指します。この先にある第二展望台が最高地点で571m。急登とまでは行かないものの、登りごたえのある坂です。風の音しか聞こえず、非現実的な風景に圧倒されます。

櫛形山

下の写真ではややわかりにくいのですが、中央奥に白い水蒸気が見えています(水蒸気噴気孔。地下のマグマが熱せられて出ているもの)。いつも出ています。ここは左の尾根っぽい道を歩いていけば良いのですが、右側の道なき道を探索している人もたまに見かけます。ただ、そちらは崩落の危険もあるので要注意です。

櫛形山

来た道を振り返ります。これは島の北東方面。白い構造物は大島温泉ホテルです。

櫛形山

櫛形山を登りながら左手、東側の海を眺めます。ここから見る海はいつでもどんな天候でも本当にきれいです。そしてこのあたりはいつも風が強い。この日は運良くそうでもなかったのですが、立っていられないほどの強風になることもあります。ウインドブレーカーまたはレインウェアが必須です(忘れたら低体温症になるレベルで、撤退を余儀なくされる場合もあるでしょう)。

櫛形山

目前の積み石のあるところは第二展望台と呼ばれます。石山の裏側に、小さい木の看板があります。奥に見えているのは、白石山(735.6m)。白石山の手前に第一展望台があり、そこには普通「月と砂漠ライン」という道で来ます(クルマか自転車がないと時間的に難しい入口)。今回は白石山の端っこの手前で右折し、カルデラを散策していきます。

櫛形山

白石山に至るこの道は圧巻です。地形的にはコルに近い感じでしょうか。風が最も厳しい道でもあります。

櫛形山

道標はひとつもありませんが、なんとなく右方向への踏跡があります。学術研究・地質調査関連と思われる車両(たまに見る)による轍もあります。

カルデラ巨石群

あまり多くの人が歩いているわけではないからでしょう、道がよくわからなくなる箇所が多いですが、三原山の周囲をぐるりと回るだけなので極端な悪天候でもなければどう歩いても良いでしょう。

カルデラ巨石群

ただ、このあたりには「カルデラ巨石群」が外輪山内側の斜面、カルデラ壁のそばに集中しているので、外輪山寄りを歩いていくと下の写真のような大きい奇岩を多く鑑賞できます。

カルデラ巨石群

このあたりは、三原山の真南くらいです。自動車の轍がしっかり残っています。

カルデラ巨石群

その先はカルデラの縁沿いに歩いていくと、赤ダレという名所に至ります。詳しくは赤ダレの紹介記事をご覧ください。三原キャニオンとも呼ばれています。

赤ダレ

赤ダレの先には「滑走台(スライダー)跡」というランドマークがあります。かつてここにはアトラクションの滑り台があったのだそうです(昭和10年〜17年、つまり1935〜42にかけて営業)。現在は遺構となっています。

滑走台跡

伊豆大島ジオパークのTwitterで滑走台が現役だった頃の写真が紹介されていました。4枚あるうちの3枚目の白黒写真、あんこさんが2人スライダーを下っていますね。当時は大変賑わった観光名所だったそうです。

滑走台跡の近くには、小さい祠があります。供え物の日本酒のガラス瓶が、強風で叩きつけられて周囲に散乱していました。立っている2本の朽木は、鳥居だったのでしょうか。ここが「馬道コース」の目印になります。すぐ後で戻ってきます。

滑走台跡近くの小さい祠

滑走台跡の先には、雨後にのみ現れる「幻の池」があります。この日は2日前から弱い雨が降っていたことを知っていたので楽しみにしていたのですが、残念ながら登場していませんでした。何度も来ているのですが、水が張ったところは未だ見たことがありません。

幻の池

ところでこのあたりでお腹が空いたら、この先の山頂口に歌乃茶屋・御神火茶屋などの食事処があります。ここから片道30分。

馬道コースで地層大切断面に下る

祠のあるところまで引き返します。このあたりから、南南西方向に適当に下っていきます。最初はいくつかの道があるのですが、ほどなくして1本の道、つまり「馬道」に合流するので、祠や滑走台の近くからならどう下っても良いと思います。ここの下りは、まあまあの急下降。もろい礫なので、トレッキングポールがあったほうが楽です。

伊豆大島・馬道コース

下のようなネットは奥武蔵や秩父なら鹿よけですが、ここではキョン対策です。ネットの向こう側にキョン用の罠があったりします。この日私はキョンを2回見ました(1回はカルデラ巨石群、もう1回はこの道)。キョンは農作物を食害するので、駆除の対象なのです。

伊豆大島・馬道コース

馬道はいちど、舗装道路(林道間伏線)を渡ります。下るほどにシダ系の植物が増えて行き、1月でもこの有様ですから夏は大変な藪こぎになると思います。虫避けネットなど、対策が必要でしょう。私は、夏はこの馬道コースを歩きたいとは思いません。

伊豆大島・馬道コース

この歩道が見えたら、馬道コースは終わりです。滑走台跡からは80分ほどです。

伊豆大島・馬道コース

この道を右手に下りていくと、バウムクーヘンこと地層大切断面に至ります。ここから10分くらい。

伊豆大島・馬道コース

地層大切断面に到着。ちょうど午後1時頃でした。ここは、道路の反対側に渡ることはできますが、ガードレールの向こう側に入ることはできません。この先にバス停があり、筆者はそこで波浮港方面行きの便に乗りました(この日は1時44分のバスがありました。季節によってダイヤが変わるので時刻表はあらかじめ調べていきましょう)。待っているあいだに大粒の雨に降られました。

地層大切断面

この日は島の南部、波浮港寄りのトウシキキャンプ場でテント泊しました。伊豆大島は魚介類や明日葉など食べ物が本当に美味しいので、元町港の近くに宿を取って夜は居酒屋さん・お寿司屋さんで乾杯もしたいところですが、この日はキャンプ。トウシキは海と三原山の眺めが良く、設備も整っている最高のキャンプ場です。この日は完ソロで、私以外は誰もいませんでした。

トウシキキャンプ場

トウシキキャンプ場はWeb予約が必要ですが、予約さえすれば料金は無料です。直火は不可ですが、焚き火台があれば焚き火OKとなっています。近くの勤労福祉会館(ぱれ・らめーる)で薪も手に入ります(水曜定休)。ただ、この日は真っ黒に焦げている芝生を見ました。防火シートを敷くなどしてルールを守りたいところです。

基本的な情報のまとめ

今回歩いたコースは、距離にして12〜15km(スマートウォッチとWebアプリで違う数字が出てしまいました。ただ12kmのほうが正しいと感じます)。歩行時間は、ゆっくり歩いて6時間という感じでした。これにお鉢廻り(火口一周)も追加するなら、プラス90分ほど。その場合でも午後3時頃には地層大切断面のバス停に降りてこられるでしょう。

私のようにキャンプするのでなく、宿に泊まる方ならお鉢廻りも入れると良いかもしれませんね。昼食は山頂口の茶屋で。下山後は温泉に入り、島の焼酎を飲んで「べっこう」というお刺身や明日葉の天ぷらなどの美味しいものを食べましょう。最高の1日になると思いますよ(キャンプ場の近くにもお寿司屋さんはあります。大関寿司または港鮨。ただし事前予約が必要)。

私はこの翌日、やはり大島グルメを食べたくなったので、バスでお昼頃に元町港に行き「寿し光」という有名なお寿司屋さんでお刺身の盛り合わせと明日葉のかき揚げを食べたあと、今度は岡田港まで7km歩いて「一峰」というこれまた有名なお店でべっこう寿司を食べました。お酒こそ飲むタイミングがありませんでしたが、美味しいものも食べられて大満足の旅でした。

寿し光 お刺身盛り合わせ

岡田港から14:30発のさるびあ丸に乗り、東京・竹芝桟橋に着いたのは19:30でした。

なお三原山の地図は、伊豆大島観光・三原山ハイキング本格地図と呼ばれるものが詳しく、おすすめです。岡田港や元町港の売店で買えるのですが、地図センターでも通販で買えます(700円)。様々な登山コースが掲載されているので、三原山歩きを検討している方は事前に入手しておいたほうが良いと思います。

また、先にも書いたようにレインウェアかウインドブレーカーは必須です。どちらか片方にするならレインウェアのほうが便利です。防風にもなり、雨にも対応できます(三原山は天気が変わりやすく、突然降ることもあります)。秋から春にかけては顔を覆えるネックウォーマーやニット帽も必要です。

トレッキングポールは、なくても良いですがあると楽。体力的にきついのはテキサスコースの前半と馬道コースの下りのみ。ただし登り・下りとも距離が短いので、ハイキング未経験者でも平均的な体力があれば身体を痛めることなく歩ききれるコースだと思います。シューズはミドルカット以上がおすすめです(ローカットだとスコリアと呼ばれる火山礫が足首から入ってきます)。

撮影データ:OLYMPUS OM-D E-M5 mark III, LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. H-X09(紹介記事)2023年1月中旬撮影

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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