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SUMMILUX 9mm/F1.7を登山で使ってわかった長所と短所 伊豆大島での使用例と感想

登山・ハイキングでの活用を考え、マイクロフォーサーズの新レンズ「LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. H-X09」を入手しました。35mm換算で18mmの超広角・F1.7の大口径でありながら非常に小型軽量なレンズです。山行での使い勝手が気になる方も多いと思うので、筆者が先日、東京・伊豆大島の三原山登山で撮った写真とともに印象を紹介したいと思います。

暗い山道でもシャッタースピードを稼げる

まずF1.7の明るさは表現的な意味とは別に、重宝します。早朝の山道は暗く、早朝でなくとも樹林帯では光量が足りず、ISOを上げてもシャッタースピードが稼げず手ブレに繋がることもありますが、F1.7ならその心配はありません。伊豆大島・三原山のテキサスコースは前半が暗い樹林帯で、この明るさに助けられました。

F1.7 テキサスコース序盤にて

F1.7 テキサスコース序盤にて

開放F1.7で撮っていた流れで、やがて見えてきた三原山もF1.7で撮りました。被写体に大きい遠近差がない場合はF1.7でも問題なく解像感の高い風景を撮れますが、下のこの写真の場合は前景(草)・中景(杭)・後景(山)と並んでおり、こういう場合はF4以上に絞ったほうが良好な被写界深度を得られます。

F1.7 テキサスコース後半から三原山を望む

F1.7 テキサスコース後半から三原山を望む

周辺部が流れる、という意見があるようですが、確かに開放F1.7ではその傾向はあると思います。上の写真ではエッジ側の乱れは個人的にそれほど気にならないのですが、気になる場合はF4〜F5.6まで絞ると周辺部もよりシャープになります。

換算18mmで広大な風景を撮れる

赤ダレ(三原キャニオン)をF4で撮影。こういう風景は18mmの広さが効き、状況がよく伝わると思います。私が登山・ハイキングでいちばんよく使うレンズはオリンパスの12-45mm F4ズームで、広角側が24mm。この赤ダレのような場所では、24mmでは狭く感じることが多いのです。広大さを伝えたい場合、やはりこの18mmは便利です。

F4 赤ダレ(三原キャニオン)

F4 赤ダレ(三原キャニオン)

下は赤ダレの近くにある滑走台跡の近くから。右手の海に見えている島々は伊豆諸島で、いちばん手前のきれいな円錐状の島は利島です。このレンズは基本的に開放F1.7でも十分にシャープで、センターはF5.6までゆるやかにシャープになりはするものの開放と極端な差はなく、センターも周辺部もF11で回折が出るように個人的には感じます。そのためF8以上はなるべく使いません。

F4 滑走台跡の近くから

F4 滑走台跡の近くから

逆光には弱い

このレンズの最大の短所は、逆光に弱いところです。開放はもちろん、かなり絞ってもフレアやゴーストが出ます。下はF4に絞りましたがゴーストが目立ちます。F11程度まで絞っても結果は同じです。ZUIKO 12-45mm F4ならF4でもはるかに良好な画になります。ちなみに機体がOLYMPUS E-M5 mark IIIなので、LUMIXのカメラで撮ったら結果は少し違うのかもしれません。

F4 櫛形山にて

F4 櫛形山にて

下もF4で撮影しました。中央の少し上に紫色の収差・ゴーストが見えます(これは頻繁に出ます)。これもZUIKO 12-45mm F4ならここまでは出ません。この9mm F1.7は太陽を入れる表現には向きません。斜めから入ってくる太陽光線にも弱いところがあります。ちなみに付属のフードを付けていますが、レンズ保護以外の意味はほとんどないと思います。

F4 三原山南東(カルデラ巨石群近く)

F4 三原山南東(カルデラ巨石群近く)

このように強い光源やコントラストの高い被写体を撮ると、パープルフリンジはよく出ます。絞っても解消されません。しかしLumix(の最近のカメラ)で撮るとボディ側で補正してくれるという話も聞いたことがあります。また、F11以上だと光条がきれいに出るという情報も目にしました(筆者はF11で出なかったので、もっと絞る必要があるのかもしれません)。

主題が浮き出る「3Dポップ」感が秀逸

風景を撮る場合、このレンズはやはり近景に何か大きめの主題があったほうがパンチのある写真になると思います。被写体が浮き上がるような、いわゆる「3Dポップ」感が出ます。なおこれは手前の草にピントを合わせています。奥の白石山をもっとシャープに写したい場合はF8まで絞ると良いです。ちなみにこの写真も中央左側に紫や緑色のフレア・ゴーストが見えています。

F4 櫛形山の第二展望台から白石山を望む

F4 櫛形山の第二展望台から白石山を望む

海岸沿いにあるトウシキキャンプ場で撮ったオオシマハイネズです。これは開放F1.7で手前にフォーカスし、画面奥ギリギリに少しだけ海を入れてみました。やはりボケを生かした写真のほうがこのレンズの持ち味が出ると思います。山行でも難しく考えず、基本的にF1.7に設定しておいて、画面内の遠近差を強調したくない時は必要に応じてF4〜5.6に絞る、という使い方になりそうです。

F1.7 トウシキのオオシマハイネズ

F1.7 トウシキのオオシマハイネズ

ハーフマクロでテーブルフォトにも対応

クローズアップが使えるところは素晴らしいです。最短撮影距離9.5cmでハーフマクロ撮影できます。お魚屋さんの前でさんまの干物を撮らせていただきました。18mmの超広角を活かして山の広大な風景を伝えるのにも勿論良いのですが、身近なものに思いきり寄って撮るのがまた楽しい。センター側のほうがよりシャープな描写なので、それもあって後景から主題が浮き上がります。

F1.7 塩さんま干し

F1.7 塩さんま干し

大島名物・べっこう寿司をF1.7開放で。湯気が立っているものだと寄れませんが、そうでなければテーブルフォトでも活躍します。ZUIKO 12-45mm F4では換算90mmの中望遠撮影も楽しめるだけでなく接写も非常に良いのですが、もしレンズを1本に絞らなければならないとしたら、この9mm F1.7でもなんとかなるかもしれません。

F1.7 べっこう寿司

F1.7 べっこう寿司

今回の伊豆大島山行では、ZUIKO 12-45mm F4も持っていきました。ZUIKO 12-45mm F4は個人的にものすごく気に入っている超優秀なレンズで、今後も山行で使い続けると思いますが、今回の大島旅行ではほとんど出番がありませんでした(赤ダレと呼ばれる崖を望遠端で撮った程度)。

さらにこのSUMMILUX 9mm/F1.7、なんと防塵防滴です。重量もわずか130gでまさに山行向き。鬱蒼とした樹林帯でシャッタースピードを稼ぐことができて、F1.7とは思えないほどコンパクトで、広大な風景を切り取れるだけでなく、主題を浮かび上がらせる3Dポップ感もある。雨でも平気。まさに登山・ハイキングで大活躍するレンズではないかと思います。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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