双眼鏡使いは少数派?
ハイキング中に、双眼鏡を所持している人とすれ違った記憶がありません。山頂で使っている人もまず見かけません。映像を「記録」する行為は常に人気があり、大部分の人がスマホで写真や動画を撮っていますが、「記録せずに見るだけ」という行為は、SNSでシェアできず、ハートもライクも付かない。双眼鏡に人気がないのは、そういう理由もあるのでしょうか。
双眼鏡には、レンズ交換式カメラシステムを凌ぐ光学性能を備えたものも珍しくありません。手のひらに収まりそうな大きさで、軽量なのに、明るく高精細な超望遠映像が得られます。ミラーレスで近い品質の映像を記録したい場合、総額数十万円の大砲セットが必要です。カメラでは対象(被写体)の補足も双眼鏡よりは時間がかかり、しかも見られるのはデジタル変換されたEVF映像。
双眼鏡の場合、対象の補足は非常に早く、直感的に行えます。映像はレンズから目にダイレクトに入ってきます。フォーカスも常にカメラほど厳密に合わせる必要はないですし、合わせる場合でも早い。「記録する」という機能を持たない代わりに、ハッとするような優れた映像体験が、ごく安価な製品でも得られるようになっているのが魅力です。
しかも、必要な操作は視野合わせ・視度調整・フォーカスの3つだけ。絞りやシャッタースピードやISOの知識も不要ですし、フレームレートもビットレートの設定も必要なし。電池切れの心配もありません。誰でも取説を読むことなく扱えます。
山座同定で活躍するのはもちろんのこと、野生動物や野鳥、花や植物のクローズアップ観察も楽しめます(用途に適したモデルを選ぶ必要はあります)。
なぜもっと人気が出ないのか不思議ですが、やはり時代的に体験そのものより、記録のほうが重視されていることと関係があるのでしょう。双眼鏡では「深い」体験を得られるものの、それを他人と分かち合うことはできない。そのせいでしょうか。
私が双眼鏡に求めるもの
ハイキングに携帯する双眼鏡に私が求める最大の要件は、とにかくコンパクトであることです。ザックのウエストベルト・ポケットに入るくらい小さいものだと完璧で、すると歩行中でも簡単に取り出せます。肩にかけていても良いですが、カメラも携帯しているので、お互いにぶつかってしまうことがあります。岩場でも邪魔になるので、ポケットに入るものが良いのです。
もうひとつは防水であること。雨に降られても、沢で転んで濡れても気にならないものが良いです。あとは当然軽いこと。倍率は8倍が自分の用途にはちょうど良く、口径(明るさ)は25mmあれば十分。最短合焦距離は重要で、短いものでないと近距離の植物を観察できません。
これらの条件を満たすものして、オリンパスの8×25 WP IIというモデルをハイキングでは主に使っています。285gと十分に軽量で、最短合焦距離は1.5m。定価で1万円もしないコンパクトモデルですが、山行での使い勝手が抜群に良いです。安価でも十分に満足できる視覚体験を得られ、あまり神経質にならずに使い倒せます。
愛用している複数のザックのウエストベルト・ポケットにもギリギリ収納できるサイズなのが、とにかく助かっています。ザックによっては、歩行時にポケットのジッパーを開いた状態でこの双眼鏡を挿して歩いたりします(ザックによってはかなりギリギリですが)。コンパスや地図と同じで、こういうものはすぐ手に取れる場所に入れておくのが大事だと思います。