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トレッキングポールを使う18のメリットと11のデメリット

トレッキングポールは、平地での短距離ハイキングを楽しんでいる方や、膝が痛くなったことのない方には特に必要ないと思えるアイテムかもしれません。私自身、あるとき膝を痛めるまでは自分には不要なものだと考えていました。しかし実際に使うようになって、トレッキングポールがあればこれから何年も以前のように歩き続けられるに違いない、と希望を持つことができました。

筆者愛用中のNatureHike カーボントレッキングポール(埼玉県・熊倉山にて)

筆者愛用中のNatureHike製軽量カーボントレッキングポール(埼玉県・熊倉山にて)

この記事では、トレッキングポールにはどんなメリットがあるのか。逆にどんなデメリットがあるのか。自分にあった製品を選ぶ時にはどのような点に注目して選べばよいのかについて、自分の経験をもとに考察してみました。

トレッキングポールの18のメリット

まずはトレッキングポールを使うことで得られる恩恵・利点について、箇条書きでざっと書き出してみました。

  1. 急坂の登りでは推進力を得られる(感覚的により楽に、より速く登ることができる)
  2. 急坂の下りでは、膝にかかる負担を腕と上半身に分散することができる
  3. ザレ場の下りでは滑り止め・ブレーキとして使える
  4. 急斜面の山腹道や沢の渡渉など、足場が不安定な時に重心バランスを取りやすくなる
  5. ヤブやクモの巣など、進路上の障害物をポールの先端でかきわけることができる
  6. 手で触れないもの・触ったら危険かもしれない物体(ヘビ・栗・毒キノコ・ガラスなど)の様子を観察する時に役立つ(プロービングツールになる)
  7. トレッキングポールと栗

    トレッキングポールがあるとより積極的に自然観察を行える

  8. 水の深さ、雪の固さ、泥のぬかるみの状態などをチェックできる
  9. 道の状態をプローブするトレッキングポール

    道の状態をプローブ(調査)することで危険を回避できる

  10. 上半身のワークアウトにもなる(上半身も鍛えられる)
  11. 肘から先が90度ほどの角度になるため、両腕が常に下がっている時と比べると血流が良くなり、むくみを軽減できる(ハンドレストとしての機能がある)
  12. 立って休憩する時に少し寄りかかれる(全体重をかけて足を離したりしなければそう簡単には壊れない)
  13. テンポ良く一定のペースで歩きたい時、あるいは速く歩きたい時、腕の振りがペースメーカーになってくれる
  14. 危険動物に対しては、逃げられず立ち向かうことがやむをえない場合は武器になりうる
  15. クマに対しては、放り投げることで注意をそらすための「身代わり」アイテムにもなりうる
  16. 一部のポールレス超軽量テントやツェルト、タープのポールとして使える場合がある(ただし短すぎるポールだと長さが足りない場合がある)
  17. 他の登山者やクルマなどに対して、振ったり天上を指したりすることで自分の存在を示すことができる(合図・呼びかけ・救援要請など)
  18. 骨折や重度の捻挫、膝痛が発生したとき、添え木や松葉杖として使える
  19. 小型カメラ・アクションカメラ・スマホ用の一脚・セルフィースティックとして使える場合がある(工夫次第。ハンドルにカメラマウントが付属するポールもある)
  20. 野営時にクマ対策で食料のバッグを木の上に吊るしておきたい時など、便利な道具になる

考えてみると、トレッキングポールには大変多くのメリットがあることがわかります。実際はもっとあるのかもしれません。

トレッキングポールの11のデメリット

今度はトレッキングポールの考えうる限りのデメリットについて書き出してみます。

  1. トレッキングポール自体が重量増となる(居住装備のポールとして使う場合を除く)
  2. 折りたたんで収納できるサイズの製品でも、それなりに大きい(かさばる)のでバッグの収納量が減ってしまう
  3. 両手が埋まるため、カメラの操作や地図の確認などにはやや手間がかかる(慣れるとストラップだけでポールを保持して両手を使うことはできる)
  4. 上半身運動が加わることにより、運動量が増えてしまう。膝への負担を軽減できても、トータルで疲労することがある(メリットとして捉えれば、上で見たように「良い運動」にもなる)
  5. 余分な出費が発生する(約5000〜20000円。カーボン製など軽量なものほど高価になる)
  6. 登山道や樹木の根に対して、ダメージを与える場合がある(保護キャップは基本的に必要)。もろい岩石などを崩す場合もあり、自然破壊に繋がる恐れもある
  7. 平地ではほぼ意味がないことが多く、無駄な重しになる場合がある(ただし高速歩行時のペースキーピング・バランス取りには役立つ)
  8. 岩の登降で邪魔になる場合がある(Ospreyのザックにある「ストウ・オン・ザ・ゴー」システムのように、すぐにポールをしまえる仕組みがあると良い。Talon 26, Talon 44など)
  9. トレッキングポールに頼りすぎると体幹の強化・バランス感覚の強化がおろそかになる場合がある
  10. 複数人で近距離で歩いている時、お互いの足に当たって思わぬ転倒を起こす怖れがある
  11. 露出した木の根にひっかけてしまい、逆にバランスを崩してしまうこともある

このようにデメリットも決して少なくないように見えますが、私自身の感覚としては、重量やサイズの問題は解決が可能で(ただしお金はかかる)、標高差の少ないほぼ平地を歩き続けることが確定していないのなら、トレッキングポールは携帯していったほうが良いことが多いように思えます。

トレッキングポールを選ぶ時に考慮すべきこと

さてトレッキングポールを選ぶ場合、どんな点に着目して自分に合った製品を選べば良いのでしょうか。材質・デザイン・付属品といった視点で整理してみました。

Naturehike カーボン製トレッキングポール

Naturehikeの超軽量カーボン製トレッキングポール。グリップはフォーム材で折りたたみ式

ポール本体の材質

まずはポール本体(棒の部分)の材質から。大きく分けてカーボンファイバー製、アルミ製の2種類があります。

  1. カーボンファイバー
  2. アルミ

カーボンは軽量なので、トータルの重量増を最低限に抑えることができ、「振り」も軽いので疲れにくいのが良いところです。一方でアルミ製に比べると、耐久性(強度)は比較的低くなるのが一般的です。また、カーボン製は高価であることも短所です。

アルミはより大きい荷重に耐えられるのですが、一般的にカーボンよりも重くなります。しかし長所もあります。壊れる時はアルミのほうが若干の「曲げ」を経てから折れるなど、破壊モードが比較的ゆるやかです。カーボンは逆に「パキン!」と一瞬で割れます。耐候性ではアルミのほうが上で(低温環境に強い)、安価なところも長所です。

グリップの材質

手で握る箇所である「グリップ」の素材にもいくつかあります。主要な素材は次の3つです。

  1. コルク
  2. フォーム素材
  3. ラバー

コルクは耐水性が高く、滑りにくいのが大きい長所です。振動吸収性も良い。使いこむと手に馴染む形状になるのも良いところ。しかし、どちらかというと高価な製品であることが多いです。

フォーム素材は握り心地が良く、吸水性も高いのですが、プラスチック製品であるため経年劣化が早い傾向があります。

ラバー素材は断熱性があり、振動吸収性にも優れるのですが、汗を吸わないため滑りやすいという欠点があります。しかしグローブをしている場合はグローブが汗や雨をある程度吸水してくれますし、グリップが良いので季節・天候によっては活躍することがあります。

デザイン

次にトレッキングポールのデザインを見ていきましょう。ここで言う「デザイン」とは、色やかたちのことではなく、伸ばす時の仕組みや、そもそも短くしたり長くしたりできるものかどうか、ということです。

分解(分割)できるタイプならサイドポケットやメイン荷室で運びやすい

主に3つのデザイン(構造と言っても良い)があります。

  1. テレスコーピング(伸長式)タイプ
  2. 折りたたみタイプ
  3. 長さ固定タイプ

テレスコーピングタイプとは、ポールの中により細いポールを収納し、長さも調整できるタイプ。身長や利用シーンに合わせて長さを自在に調整ができるのが大きいメリットです。しかし長さ調整用のパーツ(固定レバーなど)があるため、重量は重くなる傾向があります。また、短くしてもある程度のサイズにはなります。

折りたたみタイプは、複数のポールがショックコードで連結されているため、コードで繋がったまま分解して、コンパクトに畳むことができるタイプです。長さ調整はできないものが多いのですが、軽量な製品が多いです。

長さ固定タイプとは、一般に「折りたたみできないもの」で「長さ調整もできない」ものです。融通が効きませんが、超軽量に仕上げることができるので超長距離トレッキングをする方などに好まれます。しかし電車やバスなどでの運搬は不便です。

長さ

次に、トレッキングポールの「長さ」に着目します。110cm〜130cmほどの範囲で様々なサイズが用意されており、使用時の長さ調整が可能なもの、長さが変えられない固定式のものがあります。ポールの長さは、グリップを自然に握った時、肘から先の角度が地面に対して90度になるものを選ぶのが基本です。

トレッキングポールを持った時の腕の位置

地面に対して腕が90度になる長さを選ぶ(この写真ではストラップがひっくりかえっていてゆるくなっていますがちゃんと調整しましょう)

地形によってトレッキングポールの長さを調整する必要はあるの?

ところで、トレッキングポールの長さを地形に合わせて調整する必要はあるのでしょうか。これは諸説あります。

個人的にはいくつもの小ピークを越えていく時にアップダウンが連続する場合などは、基本的に気にしていません。登りではやや短めにする、下りではやや長めにするのが良い、というセオリーがあり、それは理にかなってはいるのですが、腕が地面に対して90度になる基本的な設定で対応できる場合が多いと感じます。

延々と登っていく、延々と下っていくことが明らかな場合は微調整しても良いかもしれませんが、そこは個人の好みになるでしょう。私自身は歩行中に長さを変えることは、まずありません

付属品

最後に付属品について考えてみます。砂や雪でもポール先端が埋まりにくい形状の「バスケット」が付属するもの、しないもの、別売りになっているものがあります。雪山や砂地では、スキーのストックで見られるような平たいバスケットが活躍するでしょう。そういう場所を中心に歩くのでなければ、ここはあまり気にしなくても良いと思います。

代表的なトレッキングポール3選

上で見たトレッキングポールの素材・デザインを踏まえて、私が実際に使っているもの・人気のあるメーカーのものから3製品をご紹介します。

アルミ製テレスコーピングタイプ

まずはポールの素材がアルミで、ある程度小さく(短く)できるものから。TrailBuddyのこのトレッキングポールは、私が最初に買ったものです。非常に丈夫なので、トレッキングポールがどんなものかわからない、という方でも安心して使えると思います。細かく長さ調整ができるので、自分に最適な長さを探って将来的に良いものを買う時の参考にもできます。欠点は、少し重いことです(1本275g)。グリップはコルクで、雪や泥に対応するバスケットも付属します。安さも魅力。

カーボン製折りたたみタイプ

Naturehikeの超軽量カーボントレッキングポール(レビュー記事)は、TrailBuddy製品の次に私が買ったもので、現在でも愛用しています。長さは110cm・120cm・130cmの3つがあり、固定長です。軽さのわりに値段が安く、良い買い物をしたと思っています。トレッキングポールを常用するようになると、やはり軽量なものに手が出てしまいます。1本171g。

長さ固定・非折りたたみタイプ

最後に紹介するのはBlack Diamondの「ディスタンスカーボン」。下の製品は数ある「ディスタンスカーボン」シリーズの中でも、畳んだりは一切できず、長さも固定のタイプです(サイズは各種あり)。主に水平移動で走るような歩き方をするためのものなので、ハイキングや登山で使っている人は稀です(ただし超軽量なので、それが好きで使う方はいるかもしれません)。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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