ハイキングコース紹介東京都の山

六ッ石山:急登の尾根道とひろびろした石尾根を楽しめる奥多摩入門にピッタリの山

六ッ石山とは

六ッ石山(むついしやま)は、東京・奥多摩の最高峰である雲取山から東にずっと伸びている「石尾根縦走路」沿いにある標高1479mの山です。山頂からの展望は、西にある鷹ノ巣山ほどのひろがりはないのですが、人気のある「ハンノキ尾根」から登るコースでは勾配のきつい尾根道と、防火帯となっている開放感のある石尾根歩きをたっぷり堪能できます。

六ッ石山

鷹ノ巣山に登ってから石尾根で奥多摩駅に下ってくるルートも人気ですが、六ッ石山のほうが1時間〜90分ほど歩行時間が短くなるため、体力中程度のハイキング初心者の方にはステップアップとして挑戦しやすい山だと思います。石尾根の気持ち良さは抜群です!

六ッ石山へのアクセス情報

六ッ石山登山の一般的なコースは、奥多摩湖近くの「水根(みずね)バス停」から「ハンノキ尾根」で登って帰路はJR奥多摩駅に向かうもの。またはその逆コース。

■ 六ッ石山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)。なお地理院地図では「六ッ石山」と、小さい「ッ」で検索しないとヒットしません。一般的には「六ツ石山」と表記されることが多いと思います。

水根バス停で降りても良いのですが、隣の「奥多摩湖バス停」で下りると立派なトイレやベンチがあるので、支度しやすいです。奥多摩湖バス停から水根バス停まではほんの少し坂を下るだけなので、よほど時間に余裕がない限りは奥多摩湖前で準備してから行っても良いと思います。

分県登山ガイド「東京都の山」によれば、水根バス停〜六ッ石山〜奥多摩駅は距離10.6km、歩行時間5時間45分。石尾根は特に険しくないのですが、足首に怪我をしないようローカットシューズは避けたほうが良いでしょう。

私が歩いた六ッ石山

ここからは2023年3月中旬、筆者が実際に六ッ石山を歩いた日の模様をお伝えします。スタート地点は奥多摩湖バス停。平日だったので7:30頃に奥多摩湖駅に付き、7:40のバスに乗りました(土日祝は7:30のバスになると思います。バス時刻表のチェックをお忘れなく)。なお奥多摩湖にはトイレはありますが飲料の自販機はありません。

奥多摩湖

奥多摩駅を出発するバスは土日祝日にかなり混み合います。駅に着いたらすぐにバスのりばに行って並ばないと、満員で乗れずに次のバスまで30分待ったりするので要注意です。可能なら平日がおすすめです

奥多摩湖でカメラを出し、OSPREY TALON 44(レビュー記事)のストラップを調整。坂を下って水根バス停に向かいます。バス停先で「大麦代(おおむぎしろ)トンネル」と「奥多摩むかし道」の入口に分岐します。ここは右の「むかし道」へ。少し車道歩きです。

大麦代トンネル

六ッ石山への道標は豊富です。確認しながら登っていくと、やがて民家の入口になっている歩道が見えてきます。ここが六ッ石山登山道・ハンノキ尾根コースの入口です。民家のすぐそばを通るので、熊鈴はこの時点では鳴らさないようにしましょう。

六ッ石山登山道

民家裏を抜けていくと、いきなり急登になります。通らせてもらえるだけでありがたい道ですね。

六ッ石山登山道

左上に見える水根産土(うぶすな)神社は最初のランドマークです。

水根産土神社

産土神社から先の登りは「奥多摩三大急登」のひとつとして挙げられることが多いです。それだけ勾配がきついのです。ハイキング・登山をはじめたばかりの方にとっては大変かもしれません。しかし、これはあくまで私の感想なのですが、普段から起伏の激しい奥武蔵の低山をたくさん歩いている方なら、特に大変な感じではないでしょう。勾配こそきついものの、一定のペースで登っていけます。

六ッ石山登山道

たとえば奥武蔵の伊豆ヶ岳〜吾野の縦走コースのほうが個人的にはトータルでもっときつい。ハンノキ尾根自体も、武川岳や横瀬二子山熊倉山などに比べると運動強度は少し下かなと感じています。そんなに怖がることはないと思います。

下は「風ノ神土」と呼ばれる小さい祠。調べても詳細が出てきません。この日はワインボトルと日本酒のビンがありました。

風ノ神土

ハンノキ尾根は風景に特に大きい変化はなく、急勾配を淡々と登るだけです。ここに限らず、奥多摩を歩いていていつも思うのですが、登山者が多いせいか道は明瞭で歩きやすいコースが多いですね。それに比べると奥武蔵の道はもっと荒れていて、アップダウンも激しい印象があります。

ハンノキ尾根

やがて「トオノクボ」に至ります。奥多摩駅と奥多摩湖の中間くらいにある「境橋」から伸びている登山道とここで合流します。

トオノクボ

左を見上げると、広々とした防火帯の尾根道が続いています。防火帯とは、人為的に木を伐採することで万一火事になった時に延焼を食い止めるために設けられているものです。

ハンノキ尾根

防火帯になってからも急登は続きます。道は粘土質で、表面が乾いているように見えても滑ることがあります。この山はさすがにトレッキングポールがあったほうが良いと思います(私は最近Naturehikeのカーボン製ストックを使っています)。

ハンノキ尾根

防火帯を登っていくと1364m付近の鞍部で一息つけます。この近くには「長尾ノ頭 1385m」という札が下がっている木が尾根上にあるので探してみてください(特に何かがある場所ではありませんが)。山頂はもうすぐそこですが、パッドを敷いて小休止しても良いでしょう。

ハンノキ尾根 長尾ノ頭の近く

最後にひと登りすると、六ッ石山頂が見えてきます。ここの登りはそれほど大変ではないので、イメージ的には水根産土神社からトオノクボまでを頑張れるなら登りきることができるでしょう。

六ッ石山頂

六ッ石山頂に着きました! 山頂からの眺めは、北西側が良い感じです。大展望を楽しむなら鷹ノ巣山のほうがはるかに良いのですが、この山頂も広さがあって気持ち良くお昼休憩できると思います。ただ、この時はまだ11時前でした。奥多摩を8:30頃に出るバスならちょうど山頂でお昼タイムにできるかもしれませんね。

六ッ石山頂

それでは下山します。六ッ石山は石尾根縦走路からは少しだけ外れているため、「鷹ノ巣山・石尾根縦走路」と示されている方向に下りていきます。「えっ、鷹ノ巣山には行かないんだけど!」と最初はビックリするかもしれません。下りた先のこの道で左折すると鷹ノ巣山、まっすぐ行くと奥多摩駅方面になります。

石尾根縦走路

縦走路を東進すると、まもなくゴツゴツした黒い岩塊が見えてきます。これは狩倉山(リンク先の記事で詳しく紹介しています)への入口になっており、所要時間も大きくは変わらないので寄ってみたほうが面白いと思います。

狩倉山入口

■ 狩倉山近くのピークからは素晴らしい富士山の姿を見ることができました

富士山(狩倉山から)

登山ガイドブックでは、狩倉山の南のこの巻道がおすすめされていることが多いですね。道標通りに歩くとこの道になります。ここはガンガン下っていきます。

狩倉山隣の巻道

やがて石尾根防火帯に出ます。ここからがこのコースでいちばん気持ち良いところです。六ッ石山や鷹ノ巣山に登るとき、私は大体この道が目当てです。ちなみにここで背後を振り返ると石尾根はまだ上まで伸びており、先述の狩倉山に至ります。

石尾根縦走路

石尾根を下っていきます。正面には御前山がきれいに見えます。勾配はそれほどきつくなく、膝に負担はかからないのですが一部ザレていて滑りやすい時もあるので足元には注意しましょう。この石尾根は風景を楽しみながらのんびり歩きたいところです。

石尾根縦走路と御前山

下ってきた道を振り返ってみました。小ぶりな岩がゴロゴロしていて、良い風景です。

石尾根縦走路

途中で巨木が倒れています。しかしここもまっすぐ。右に作業道への分岐があります。

石尾根縦走路

明瞭な登山道を追っていくと、左側に小さいピークが見えることがあります。これらは歩けるところが多いので、気持ちに余裕があれば尾根側に入っていくと良いでしょう。

石尾根縦走路

ここでは「丸山」という札のかかった木を見かけました。標高1170m。これも地理院地図には載っていない平べったいピークです。

丸山

石尾根縦走路の終わり近くになると、こんな風景が見えてきます。左に行くと奥多摩駅方面なのですが、直進すると三ノ木戸山に至ります。プラス20分ほど見て寄ってみてはどうでしょうか。

三ノ木戸山入口

三ノ木戸山の北の巻道は、日当たりが悪く道が乾いていないことが多く、粘土質なので滑りやすい箇所があります。

三ノ木戸山の北の巻道

この日はまだ良いほうだったのですが、雨後はドロドロになっていることもあるので注意しましょう。三ノ木戸山側を見上げると岩がそこここで露出しており、このあたりは土の下にたくさんの岩が埋まっているのだろう、と思わされます。

三ノ木戸山の北の巻道

やがて目立つ道標に至ります。ここは直進すると東京農業大学の演習林で、右折すると奥多摩方面へ下る樹林になります。

三ノ木戸山の北の巻道

この道を下っていきます。距離はまあまああるのですが、奥武蔵の起伏の激しい樹林の下りとは違い、比較的楽に下りていけます。

羽黒三田神社に下る尾根道

その先では、人為なのか、自然にこうなったのかは不明ですが、かなり歩きにくい箇所があります。右に巻いて下りやすいところから登山道に下りたほうが良いでしょう。

羽黒三田神社に下る尾根道

やがて朽ちた木橋に至ります。この橋は何年も前から状態が悪いのですが、この日渡ってみるともう限界に近いほど傷んでいました。渡っているときにいつ壊れてもおかしくない感じだったので(私はそっと渡った)、場合によってはロープをつかみながら巻いていったほうが安全かもしれません(滑落注意)。

朽ちた木橋

木橋を反対側から撮ってみました。複数人で同時に渡るのは絶対にやめたほうが良いでしょう。最後のほうは渡らず、崖側に飛んで巻きました。コース全体を通じて危険な箇所はほぼないと思いますが、ここだけ気をつけたほうが良いです。

朽ちた木橋

やがて林道に出ます。振り返ると「石尾根縦走路・六ッ石山」を示す道標があります。奥多摩駅から登ってくる場合は、ここを目印にするのが良いでしょう。

六ッ石山登山道入口(奥多摩駅側)

ここからは車道下りメインとなります。途中、羽黒三田神社・奥多摩駅方面へのショートカットが示されているので注意して見ておきましょう。

六ッ石山登山道(奥多摩駅側)

平将門ゆかりの羽黒三田神社には裏側から入ります。神社から降りる道は左右に分岐しますが、左折します。

羽黒三田神社

ここまで来れば奥多摩駅はもうすぐです。河津桜が満開でした。

奥多摩駅付近

奥多摩駅に着きました。古風で味わいのある駅舎です。2階にカレー屋さん・コーヒー専門店・中古アウトドア用品ショップが入る「PORT OKUTAMA」があるので、電車まで時間がある方は是非寄ってみてください。私はこの日「Gotta Coffee」でコーヒーをいただいたのですが、すごく美味しかったです。おみやげにニジマスの燻製も買って帰りました。クラフトビールも飲めます。

奥多摩駅

最後に水根〜六ッ石山〜奥多摩駅というこのコースの感想をまとめると、ハイキング初心者の方には「良い挑戦」になる道。歩行時間が6時間弱なので、体力のある中級者の方ならより展望の良い鷹ノ巣山を目指し、帰路で六ッ石山に登り返してから石尾根縦走路を下ってきたほうが満足感は高いかもしれません。

奥多摩三大急登のひとつされる「ハンノキ尾根」については、私感では「恐るるに足りず」。勾配は確かに楽ではありませんが、足が滑ることもなく、道は歩きやすい。また、コース全体を通じて道の状態は良好だと思います。奥多摩の山は概して、標高は奥武蔵より高い山であってもかなり歩きやすい印象があります。歩く人が多いので道がよく踏まれているからでしょうか。

六ッ石山から下る石尾根防火帯については、勾配はきつくはないので膝への負担は少ないのですが、距離は長いので山歩きに慣れていない方の場合は足指が痛くなるかもしれません。鷹ノ巣山から奥多摩に下りてくるコースに体力的に不安がある場合は、まずこの六ッ石山コースに挑戦してみると良いかもしれません。

くつろげる広々とした場所がたくさんあるので、コンパクトなアウトドアマットを持参して、随所で大休止を楽しみながら歩いてみてはどうでしょうか。鷹ノ巣山から下ってくる場合はあまりゆっくりできないのですが、六ッ石山コースならあまりせかせかすることなくのんびり歩けると思います。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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