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新鼻新山:サスペンスドラマで追い詰められた容疑者がたどり着きそうな三宅島のチョコレートケーキ

三宅島(東京都・伊豆諸島)の名所「新鼻新山(にっぱなしんざん)」を訪れたので、感想とともにご紹介します。「山」という名こそが付いていますが、実際は「海沿いの断崖」という印象です。形状も色彩も非常に印象的で、存在感がドカンと強烈でした。見た目がチョコレートケーキのようで、美味しそうでもあります。

新鼻新山(三宅島)

新鼻新山は1983年(昭和58年)の噴火時に、海底爆発によってたった一晩で誕生したとされています。三宅島の観光ガイドブックでも主役級の扱いになっている絶景スポット。確かに感動的でした。三宅島に行くなら絶対に寄っていくべきところです(写真はいずれも2023年10月筆者撮影)。

新鼻新山へのアクセス

新鼻新山は三宅島の南部(阿古地区)にあり、三宅一周道路から簡単にアクセスできます。アカコッコ館や大路池からさほど遠くないので、併せての訪問がおすすめです。

■ 新鼻新山付近の地理院地図(拡大・縮小できます)。

道路の道向いには、かつて存在した「新澪池(しんみょういけ)」(1763年に形成)がやはり昭和58年の雄山の噴火時、水蒸気爆発を起こして消し飛んでしまった「新澪池跡」もあります。ほぼ同じタイミングで消失した新澪池の跡地・誕生した新鼻新山、両方観察していくと良いでしょう。

新鼻新山を歩いてみた

新鼻新山への入口は、かなり発見しにくいです。「新鼻新山はこちら」などといった道標はひとつも見かけませんでした。しかし「新澪池跡」のある「新澪池園地」の看板が斜向いに目立っているので、そこを目安に探してみると良いでしょう。道路の南側に、下の写真のような感じのトレイルがあります。このあたりから海に向かえば、新鼻新山が見えてきます。

新鼻新山(三宅島)

この入口の隣には「ボルト・ハーケン類の打ち込み禁止」の警告看板があったので、それを探してみると良いと思います。誰かが新鼻新山でクライミングを試みたことがあったのかもしれません

崖の先端で少しだけ標高が高いのが新鼻新山。黒いスコリアで覆われた、砂漠のような風景です。ちなみに三宅島・御蔵島・八丈島・大島で見られるのがこの黒色系の溶岩(噴出時の温度が1000〜1200℃で粘り気が少ないため、流れが速い。すると比較的なだらかな斜面が形成される)。

新鼻新山(三宅島)

新島・式根島・神津島だと白色系溶岩(噴出時の温度が800〜900℃と比較的低温で、流れが遅い。すると急峻な地形になる)になるのが面白いですね。伊豆諸島は「黒系の島」と「白系の島」という区分けで考えることもできる…

噴石丘である新鼻新山は伊豆大島・三原山の赤ダレに雰囲気が似ていますが、赤色はより深く、茶色に近い。ワインレッドのようにも見えます。黒い層は重厚感がすごい。黒トリュフをのせたチョコレートケーキのようだ! 伊豆大島の地層大切断面が「バウムクーヘン」なら、三宅島の新鼻新山は「ガトー・オ・ショコラ」だ、と宣伝しても良いのではないでしょうか。

新鼻新山(三宅島)

ここはサスペンスドラマの撮影で使われたことがあるとも聞きました。確かに追い詰められた犯人に向かって刑事さんが「バカなことをするな! 戻ってこい… まだやり直せる!」と語りかける姿を想像してしまいます(子供の頃に見た「火曜サスペンス劇場」や「太陽にほえろ!」でそういうシーンを見たような気がします。現代の若者は何の話かわからないかもしれません)。

ちなみにこの時、崖の先端には猛禽類と思われる大きい鳥が一羽佇んでいて海を眺めていたのですが、私が近付いていくと逃げてしまいました。お邪魔してごめんね。

新鼻新山(三宅島)

山頂(?)にはワシっぽい鳥の羽が残っていました。鳥にとっても眺めの良い一等地なのでしょう。

新鼻新山から西側を眺めたところ。大島の「赤ダレ」と海の風景が融合したような印象です。足元注意を示す看板やロープなどはないので、歩く時は十分気をつけてください。遠くに見えているのは「三本岳」としても知られる大野原島(無人島)。これも大島の「筆島」を思い出したりしました。三本岳のほうがずっと大きいけれど。

新鼻新山(三宅島)

やはり伊豆大島の南部にある「トウシキ園地」(トウシキキャンプ場があるところ)に似た雰囲気もありました。奥に見えているのは御蔵島です。

新鼻新山(三宅島)

暴風柵も、トウシキキャンプ場で見たものとそっくりです。トウシキキャンプ場からは三原山が見え、新鼻新山からは雄山が見える。いつかここに「ニッパナキャンプ場」ができたら素晴らしいなぁ、と思いました。ただ、三宅島は噴火の周期が最近では約20年おきと短いので、観光地としてどこまで整備できるか・すべきかの判断は、自治体にとって難しい問題なのだと思います。

新鼻新山(三宅島)

三宅島は伊豆大島と似たダイナミックな火山地形でありながらも、このように人の手が入っていないところ・手取り足取りの道標などがないところが、旅人にとっては逆に魅力的です。荒々しく、良い意味で寂しく、心が落ち着きます。三宅島と大島は、まるで兄弟のように思えました。

三宅島の観光協会さん・お菓子屋さん、新鼻新山をかたどった地域スイーツ「新鼻ショコラ」を売り出してみてはどうでしょうか。上層がダークチョコ、下層がココアスポンジの、濃厚なチョコレートケーキ。私が調べた限り、そういうお菓子はまだ存在していないようです。有名な「岡太楼本舗の牛乳せんべい」と並ぶ大ヒット商品になったりして!?

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著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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