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三宅島の火山体験遊歩道を歩いてみた:溶岩流に呑みこまれた40年前の小中学校の廃墟はいま

三宅島の名所「火山体験遊歩道」を歩いてみたので、感想を書いてみます。この遊歩道は三宅島の西部・阿古(あこ)地区にあり、いまから40年前、1983年(昭和58年)の雄山噴火による溶岩流に呑みこまれた旧阿古小学校・中学校を観察できます。

火山体験遊歩道(三宅島)

火山体験遊歩道へのアクセス

火山体験遊歩道は錆ヶ浜港(さびがはまこう)から歩いて行ける距離にあります。三宅島には東海汽船の大型客船が早朝5時に接岸する港が3つあるのですが(錆ヶ浜港・伊ヶ谷港・三池港のいずれかで、海況によってどこに着くかは直前までわかりません)、もし錆ヶ浜が到着港だった場合は近くの「ホテル海楽」で朝食バイキングを楽しんでからここに歩いてくるのも良いかもしれません。

■ 火山体験遊歩道付近の地理院地図(拡大・縮小できます)。

火山体験遊歩道には入口が2つあります。どちらも三宅島一周道路から海側に分岐した道沿いにあり、海寄りの入口からだと登りとなり、周回するコースが所要時間10分。東側に抜けると20分。東側の入口まで歩いていって、また戻ってくると全体をよく観察できます。

近くにメガネ岩という名所もあるので、そこも一緒に見ていくのがおすすめです。

火山体験遊歩道を歩いてみた

ここからは2023年10月、筆者が実際に火山体験遊歩道を歩いた時の模様をお伝えします。海側の道路から旧阿古小中学校が既に見えていたのですが入口を見落としてしまったため、遠回りして坂の上から下ってくることになりました。どちらが良いコースというわけではなく、どちらから入っても楽しめると思いました。一般的には海側の入口から入ると思います。

火山体験遊歩道(三宅島)

1983年10月3日、雄山(おやま)南西の山腹である二男山(じなんやま)から噴出した溶岩が、ここまで流れ出てきました。その時に340棟の住宅が消失したそうですが、日頃の防災訓練のおかげで死者は幸いゼロだったそうです。またこの時に島の南部では新鼻新山が誕生しています。

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木製の歩きやすい遊歩道が、まるで湿地帯の上であるかのように溶岩原の上に渡されています。全体を通してサンダルで歩くこともできます。しかし溶岩石は鋭利で少しでも素肌に当たると怪我をするので、十分に注意してください。三宅島歩きは基本的にスニーカー・ハイキングシューズ以上、靴下の併用がおすすめです。

火山体験遊歩道(三宅島)

現地の解説板によると、一面を埋め尽くしている玄武岩質マグマ起源の溶岩石は外見こそ刺々しいものの、内部は均質で緻密な構造となっている「アア溶岩」と呼ばれるタイプだそうです。この「アア」はハワイ語で「痛い」を意味するそうです(英語の”Ouch”に相当)。

火山体験遊歩道(三宅島)

ところどころに見られる緑のスポットは、ハチジョウイタドリなどが主です。ハチジョウイタドリは溶岩原に最初に侵入する植物のひとつで、その葉がやがて枯れていくとに土になり、それをもとに林・森が生まれていくことになるのだそうです。見えはじめた構造物が、旧阿古小学校。小学校の右手側の海上にうっすらと見えているのは左から式根島・新島です。

旧阿古小学校

1983年10月3日の午後3時15分に発生した噴火の溶岩流が、3階建ての阿古小学校の校舎2階まで埋め尽くしました。3日は月曜日で、前日は運動会が開催されていたそうです。40年前とは思えないほど建物の状態は良いです(外側は少し補修・保存されているようにも見えます)。教室の中はガラスや瓦礫が散乱していて、カラスのねぐらにもなっているようでした。中には入れません。

旧阿古小学校

下の写真は、阿古小学校の左隣りにある体育館と思われる建物です。鉄骨が剥き出しになっています。少し不謹慎な表現かもしれませんが、廃墟好きの方には興味深いスポットだと思います。また三宅島は伊豆大島と非常によく似た雰囲気があると思いますが、こうした噴火被害の生々しい痕跡を観察できるのは三宅島独自のものだと思いました。海上に見えているのは神津島。

旧阿古小学校

遊歩道を進むと、旧阿古中学校が見えてきます。こちらは屋上の高さまで溶岩で埋もれたようでした。また他の記事でも書いたのですが、ここではハシブトガラスの群れが非常に目立ちました。100羽くらいはいたと思います。

旧阿古中学校

中学校の隣には大きい水たまりもあったので、カラスが暮らすには都合が良い環境なのかもしれません。大好物のヒキガエルもここで育ちそうですし、水も飲めて、水浴びもできますね。伊豆諸島はこの季節、どこもススキがきれいです。奥に見えている砂地とのあいだに道路が通っています。

旧阿古中学校

旧阿古中学校付近から、小学校側を振り向いた様子です。溶岩原に転がっている噴石はサイズが大きく、石というよりはバスケットボール大の岩が密集している感じです。ダイナミックで荒々しい光景です。

西から見た旧阿古小学校

旧小中学校をぐるりと回るように一周するだけでも楽しめますし、東側に抜けていくのもどちらも楽しめます。東側に抜けたら、また海沿いの道路に下りてこられますし、ピストンで遊歩道を戻ってきても良いです。

火山体験遊歩道(三宅島)

東の入口から海沿いの道路に下りていくとき、道路脇の石壁が目をひきました。溶岩石が埋めこまれているように見え、土地の資源を有効利用する素晴らしいアイデアだなと思いました。

溶岩石を有効利用した石壁

三宅島はこの火山体験遊歩道のように、道路からすぐにアクセスできて比較的短時間で回れる名所が多いです。野鳥や三宅島の自然一般について学べるアカコッコ館ひょうたん山・三七山などもぜひ訪れてみてください。全く退屈することのない、魅力的な島です。

三宅島で生きていくことは本当に大変なことだと思いました。多くの方に観光に来ていただいて、地域経済が少しでも活性化してくれることを願わずにはいられません。

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著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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