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大路池:伊豆諸島最大の淡水湖は噴火の影響を免れた古い森に囲まれていた【三宅島】

三宅島の大路池(たいろいけ)は、伊豆諸島のなかで最大の淡水湖です。周囲約2.1km(歩道周回は1.3km)、水深30m。三宅島における最大のバードウォッチングスポットで、2ヶ所ある桟橋からは水鳥も観察できます。島のシンボルであるアカコッコ、カラスバトやイイジマムシクイ、オーストンヤマガラなどもまわりの森で観察しやすいそうです。

大路池(三宅島)

大路池は約2500年前の火山活動で生まれた、とされています。周囲はタブノキやスダジイを中心とした照葉樹林で、噴火後に数百年以上を経て植生の遷移が進んだエリアであることがわかります。2000年に発生した雄山の噴火(水蒸気爆発)でも、大路池近辺の植生は幸い影響を受けなかったそうです。つまり「古い三宅島」のエッセンスが残っている場所とも言えそうです。

野鳥観察には5〜6月がベストシーズン。また大路池の近くにある樹齢600年以上といわれる「迷子椎(まいごじい)」も見所となっています。

大路池へのアクセス

大路池は三宅島の南部にあります。三宅一周道路から北に分岐する道で行けるほか、アカコッコ館からもトレイルが続いているのであわせて訪問するのがおすすめです。アカコッコ館では三宅島の歴史・自然一般について、日本野鳥の会のレンジャーさんによる解説を聞くこともできます。私は大路池のあとに訪れました。

■ 大路池付近の地理院地図(拡大・縮小できます)。池の下に見えている3つの赤い構造物が「アカコッコ館」。黄色い道は三宅一周道路。

下は三宅一周道路から大路池に直接向かう時の道です。途中で舗装はなくなり、砂利道になるのですが、自動車で大路池奥の「北桟橋」近くまで行けます(駐車場あり)。

大路池(三宅島)

最初にアカコッコ館に行く場合は上の道には入らず、もう少し西に一周道路を進みます。アカコッコ館前にも駐車場はあります。時間に余裕があれば、歩いて回ったほうが良いと思います。

私が歩いた大路池

ここからは筆者が2023年10月、実際に大路池まわりを歩いてみた時の模様をお伝えします。分岐路はほどなくして砂利道に。左側に見える木段の道は、アカコッコ館に通じています。右に降りていくと「南桟橋」に至ります。すぐに大路池を眺めたい方は、こちらが良いですね。私は、奥の北桟橋までまっすぐ歩いていくことにしました(南桟橋からも反時計周りに一周はできます)。

大路池(三宅島)

木漏れ日の美しい道を下っていくと、やがて「大路池園地」という看板に迎えられます。この日はガイド付きツアーの方々が、私より先に数台のクルマに分乗して訪れていました。ちなみにここにはトイレもありましたが、他の場所で済ませておいたほうが良いと思いました。

大路池(三宅島)

下が北桟橋から眺めた大路池です。なお作家の太宰治が1937年5月、三宅島に一週間滞在しており、このあたりに座っている当時の写真が近くに掲示されていました。

大路池(三宅島)

これだけの大きさの湖は、たしかに伊豆諸島の島では唯一無二ですね。深く落ち着いた色合いの水です。むかしは、三宅村の簡易水道の水源としても使われていたそうです(現在は地下水が水道水になっているそうです。現地の看板による情報)。

大路池(三宅島)

この日、筆者が観察していた限りでは魚の姿はなかったのですが(10月だったせいもあるのかな)、何らかの淡水魚はいるようです。大路池の魚類・水棲生物に関する情報は、現地では見かけなかったと思います。次回アカコッコ館のレンジャーさんに質問してみたいところです。

大路池(三宅島)

さて、下が有名な「迷子椎(まいごじい)」です。順番的には、北桟橋に至る手前にあります。あまりに大きくて目立つため、この森で道に迷ったらこの椎の木を目印にすると良い、ということからこの名が付いたそうです。樹齢約600年。噴火を司る神が宿る神木でもあるため「やどり木」とも呼ばれていたそうです。島の守り神ですね。

迷子椎

下は三宅一周道路に戻る途中、大路池を俯瞰したところです。

大路池(三宅島)

ところで、三宅島にはかつて「新澪池(しんみょういけ)」という大きい淡水湖がもうひとつあったそうです。新鼻新山の道むかいに存在した新澪池は、1763年の噴火で生まれた火口湖で、水面が一日に七色にも変化する美しい池だったそうです。0.5%の塩分を含む珍しい水質で、鯉やワカサギがいたとのこと(淡水というより汽水だったのかな?)。

しかしその新澪池は1983年の噴火で、流れてきた溶岩と池の水が接触し、水蒸気爆発を起こして吹っ飛んでしまいました。

大路池と新澪池というペアのうち、片方が消えてしまった…

この「ペアである片方がなくなった」というところは、ひょうたん山メガネ岩と通じるところがあるように思ったりしました。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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