清澄庭園とは
東京都江東区にある清澄庭園(きよすみていえん)をご紹介します。都会のなかにある庭園なので「ハイキングコース」ではないのですが、都市の中に再構築された日本的な自然の景観を楽しむことができます。遠くの山までハイキングに出かけるのはきついなぁ、という時など、近所の方は足を運んでみてはどうでしょうか。充実した時間を過ごせると思います。
清澄庭園の詳しい歴史についてはWikipediaや公式サイトをご覧いただくとして、ここで簡潔に説明すると、むかし大名屋敷があった土地を三菱財閥創始者の岩崎弥太郎が買い取り、岩崎家が三代にわたって「回遊式庭園」として改修してきたのが清澄庭園。その後は東京都に寄付され、現在は都の指定名勝となっています。
1923年9月1日に発生した関東大震災の際には避難場所として機能し、多数の人命が救われた場所でもあります。隣接する清澄公園も、もとは清澄庭園の一部でした。
清澄庭園へのアクセス
清澄庭園へのアクセスは、公共交通機関なら地下鉄大江戸線・半蔵門線の清澄白河駅が最寄り駅で徒歩3分。都営バスのバス停もすぐ近くにあります。隣の清澄公園にはコミュニティサイクルのポートもあるので、レンタルの電動自転車でやってくるのも手です。
■ 清澄庭園付近の地理院地図(拡大・縮小できます)
また清澄庭園は隅田川のすぐ近くですから、隅田川テラスのウォーキング途中に寄ってみるのも良い手です。清洲橋(きよすばし)の東詰から歩いて5分ほどです。
上の写真が清澄庭園の入口で、この右手には広い清澄公園があります。庭園は年末年始以外は無休で、開園は9:00〜17:00(最終入場は16:30)。入場料は大人150円です。中には飲料の自販機があります。アルコール以外の飲食物の持ち込みも可能で、ベンチや自由広場でゆっくり食事休憩することもできます。ピクニックを兼ねるのも良いでしょう。
私が歩いた清澄庭園
ここからは2023年8月下旬、筆者が実際に清澄庭園を歩いた時の模様をお伝えしていきます。まずは庭園の全体図を眺めてみましょう。入口は一箇所で、まんなかに大きい池があります。池の北側(下の写真の右側)には「大磯渡り」と「磯渡り」があり、石伝いに池の水際を歩けます。池の中には「松島・鶴島・中の島」があり、中の島には歩いて渡れます。一般的には時計回り。
南側には「富士山」という小高い丘があり、その先には普通の公園のような雰囲気の「自由広場」があります。自由広場は大きいテーブルが複数あるので、お昼休憩にも良いです。年間パスポートを持っている近所の方はこの庭園でゆっくりランチを楽しんでいることも多いです。
清澄庭園の最大の特徴、といいますか、私にとっての最大の魅力は、日本全国から集められた石や岩の姿を楽しめるところ、石の上を歩けるところです。岩崎弥太郎が石好きだったとのことですが、よくもこれだけの大きさの石をたくさん運んでこれたものだなぁと感心させられます。さすが日本の海運王。下は「伊豆石」、火山岩由来のものですね。
下は「長瀞峡」に至る石橋で「仙台石」という巨大な2枚の岩で作られています。
下は「中の島」に埋められている「武州三波青石(ぶしゅうさんばあおいし)」。松の木もいい感じですね。
下は庭園西側の「大磯渡り」。中央近くに見えているのが「松島」で、左に見えている建物が「涼亭」です(元々は茶屋だった)。
こちらは東側の「磯渡り」。芝生の上にも道があるので、磯渡りも含めてゆっくり2周したいところ。ちなみに清澄庭園は一周約40分ほどですが、1時間〜90分ほどかけてのんびり景観を味わうのがおすすめです。長瀞渓谷などが好きな方はきっと雰囲気が気に入ると思います。
この日、筆者はXERO SHOES GENESIS(紹介記事)というサンダルで歩きました。一般的なシューズよりも足裏からの感覚がダイレクトに伝わってくるので、磯渡りの石をこれで歩くと気持ち良さ倍増でした。清澄庭園は全域でサンダルでも歩けます。ただし夏は蚊がいるので注意しましょう。
■ XERO SHOES GENESISの紹介記事↓
「中の島」へは風情のある小橋が架けられています。
池にはカメやスッポンがたくさん放されていて、人を見かけると寄ってきます。餌をもらえると思うのでしょう。かつては餌やりできたようですが、現在では禁止されています。
磯渡りの上で、近寄ってきたスッポン君とツーショット。
可愛らしいスッポン君ですが、指を噛まれるので注意が必要です。
こちらは中の島から見た「富士山」です(画面中央)。小高い盛り土の山です。日本をミニチュアで再現してやろう、という感じですね。
この富士山、登りたいなぁといつも思うのですが、芝生に入ってはいけませんとあるので、恐らく登れないのだと思います。登ったら見晴らしがものすごく良さそうなのですが… 「登山道」が整備されたらありがたい。
これは富士山から続いている「枯滝」。素晴らしく風情がありますね。石を使って滝を表現しているわけです(滝というより沢かな? 沢登りしたい…)。
下は入口側から池の向こうに見えていた「涼亭」です。現在は事前予約することで使える集会所とされていますが、コロナ以前はここで抹茶や和菓子を出していた時があったように記憶しています。仕組みが変わったのかもしれません。
下は自由広場で撮ったオミナエシの花。自由広場には松尾芭蕉の「古池や かはず飛びこむ 水の音」の句が刻まれた大きい句碑もあります。芭蕉はこの近辺に住んでいる時にその有名な句を詠んだのだそうです(清澄庭園の池=古池ではないようですけれども)。
下は入口の隣にある「大正記念館」。筆者が訪れたこの日、大正記念館では関東大震災を振り返る大変有意義なパネル展示・ビデオ上映が行われていました。清澄庭園にはかつて「日本館」や「洋館」といった立派な建築物もあったのですが、関東大震災の際に焼けてしまったそうです。
冒頭でも書いたように、清澄庭園は関東大震災の時に多くの方にとって避難所となりました。関東大震災ではとにかく家が燃えたので、その炎や輻射熱で亡くなった方が多いと聞きます。この広い公園に逃れてくることで火と熱が周囲の木々によって遮られ、多くの人が助かったそうです。公園のような広い場所が地震時の避難所に指定されているのは、そのような意味もあります。
東日本大震災では、津波が最大の死亡原因になりました。阪神淡路大震災では、建物の倒壊による圧迫死。関東大震災では、火災が最大の死亡原因になったと言われています。
都心の隠れ名勝地
清澄庭園は「回遊式林泉庭園」という形式の庭園なのだそうです。日本庭園のことは全然詳しくないのですが、日本各地の風光明媚な自然の風景をミニチュアで「再現」しようとしたのだろう、と思わされます。西欧式の自然を「支配」するタイプの庭園とはまったく違う印象です。
池も、かつては隅田川からの水を引き入れ、水位の変化によって景観も変化する「潮入」という技法が採られていたそうです。
東京都心で清澄庭園に近い雰囲気の場所というと、浜離宮や旧安田庭園などもあると思いますが、清澄庭園は浜離宮よりは小さく、旧安田庭園よりはずっと大きいという印象です。小さいながらも、日本的景観の魅力がギュッと濃縮されているように感じられます。あと、野鳥も結構います。山歩きとはまた違う楽しさがあります。瞑想しているような気持ちになれます。
入場料が必要な施設であるせいか、園内は整備と手入れが大変行き届いており、都心にこんな名勝があるのか、と驚かれることと思います。清澄白河や近くの門前仲町には飲食店も多いので、散歩後においしいものを食べて帰るのも良いと思います。
ちなみに受付では和傘の貸出しもしているようです。和服を着て記念写真を撮ったりするのも、おもしろいかもしれません。外国の方を連れてくると大変喜ばれる場所でもあります。