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壊れ方が味わい深い白岩小屋・いまだ生活感の残る廃墟【2023年5月】

白岩小屋(しらいわごや)は、雲取山・妙法ヶ岳とともに埼玉秩父の「三峰山(みつみねさん)」を構成する白岩山(標高1921m)の北に500mほどのところにあります。三峰神社から登ってくるとき、標高1764m付近の尾根道の先に見えてくる朱色の屋根がそれです(写真はいずれも筆者が2023年5月中旬に撮影したもの)。

白岩小屋

■ 白岩小屋付近の地理院地図(拡大・縮小できます)

北側から見た白岩小屋です。老朽化のため現在は使われておらず、廃屋となっています。手前はテントを張るのにとても良さそうな地面に見えますが、雲取山を目指す場合はやや中途半端な場所ではあります。休憩にはすごく良いですね。

白岩小屋

尾根側に回りこむと入口があり、「白岩小屋」の看板も残っています。戸は開いていて… というか、戸はなく、シカなどは勝手に出入りしていそうです。

白岩小屋

中を覗いてみると、まだ新しそうな布団が5〜6組ほど壁際に積まれています。想定外の雨や風雪は凌げそうですが、床の土埃がすごいのでスリーピングマットなどを敷いたらものすごく汚れてしまうでしょう(近くの水場までは10分以上あると聞きます)。しかし本当の緊急時なら転がりこめそうです(外にツェルトやテントを張ったほうが快適でしょうけど)。

白岩小屋

「よごさぬように美しく」という昭和風のブリキプレートが見えます。かつては良い雰囲気の山小屋だったんだろうなぁ、という印象を持ちます。建物全体の造形も良いです。

白岩小屋

東面に回ってみます。南面が吹き飛び、そちら側に傾いています。まだ生活感が残っていて、むかし訪れたカリフォルニア・シエラネバダ山脈のBodie(ボディ・標高2550m)というゴーストタウンを思い出しました。ボディはかつてゴールドラッシュの時に栄えた町で、こういう生活感の残る木造建築がたくさん残っているのです(いまは誰も住んでいない観光地)。

白岩小屋

東側に張り出した尾根からの眺望も素晴らしい。ベンチやテーブルは傾いていましたが、まだまだ使えそうでした。人の匂いがします。そこで大勢の人が楽しくごはんを食べている姿が目に見えるようです。

白岩小屋

白岩小屋は秩父多摩甲斐国立公園の中にありますから、ここでの幕営を前提とした登山計画を立ててはいけないとは思いますが、奥多摩のほうから縦走してきて三峯神社に辿りつくまで怪我をしてしまったとか、想定外の天候悪化に見舞われた時などはぎりぎり使えるかもしれません。建物自体がちょっと崩れそうですけれども。廃止されたのがもったいない、良い雰囲気の小屋です。

シカがよく現れることで有名な白岩山に張り込む時などに良さそう… とも思いましたが、国立公園なのでやはりいけませんね。

白岩小屋は今後どうなるのか。登山人口は減っていくでしょうし、自治体にはこれを修繕するお金もないでしょうし、そもそも需要もない。取り壊すのにもお金がかかる。

よほど危険な状態にならない限り、このまま何年もかけて朽ちていくのでしょう。何にでも終わりがあります。栄枯盛衰、諸行無常。山歩きをしていると、そのことをよく考えさせられます。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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