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ひょうたん山と三七山:誰でも登れるミニチュアのような三宅島のプチ火山

伊豆諸島のなかで三番目に大きい三宅島。その中心の雄山(おやま・775m)は2000年の噴火以後は登山できないのですが、島には他にも歩いて楽しいところがたくさんありました。この記事では、東部の「ひょうたん山(59m)」と「三七山(さんしちやま・88m)」をご紹介したいと思います。下は、三七山頂から見たひょうたん山(写真はいずれも2023年10月筆者撮影)。

三七山から見たひょうたん山

ひょうたん山と三七山は隣り合っており、名所の椎取神社も近所なのでまとめて歩いてみるのがおすすめです。

ひょうたん山・三七山のアクセス情報

ひょうたん山・三七山ともに三宅島一周道路沿いにあります(神着地区)。どちらも駐車場があるのでレンタカーで訪れても良いですし、バス停「椎取神社(しいとりじんじゃ)」または「赤場暁(あかばきょう・あかばっきょう)」を利用するのも良いでしょう。

■ ひょうたん山付近の地理院地図(拡大・縮小できます)。

どちらも道路側には目立つ道案内の看板はほぼないので、もしクルマやオートバイで訪れる時はこの付近でスピードを落としてみてください。三七山には大きい駐車場があるのですが、ひょうたん山の入口は少しわかりにくいかもしれません。

ひょうたん山

まずはひょうたん山からご紹介。1940年(昭和15年)の噴火の際、雄山の北東山腹(標高200m付近)で割れ目噴火が起こり、海まで流れ出したマグマによって一夜にしてこのひょうたん山が生まれたとのことです。「新東京百景」にも選ばれています。

ひょうたん山

下はアカコッコ館で展示されていた三宅島のジオラマなのですが、茶色い部分が溶岩流の結果生まれた、スコリア質の山になっています(三七山はひょうたん山より後に誕生)。ひょうたん山と三七山の位置関係がよくわかるので、頭に入れておいてみて下さい。溶岩流にのみこまれた有名な椎取神社もすぐ近くです。三宅島のなかでも特異なスポットであることがわかりますね。

三宅島のジオラマ模型

下はひょうたん山入口付近。筆者の訪問は2023年10月中旬でしたが、草が生い茂っていて入口がよくわかりませんでした。しかし考える必要はなく、複数ある小径を海側に進めば、どこからでもひょうたん山に入れるようでした(ここはすぐ左に入りました)。

ひょうたん山

すぐ目の前がひょうたん山です! 伊豆大島の裏砂漠(三原山)に非常によく似た雰囲気で、そのミニチュア版という印象を受けます。標高わずか59mの低山ながらも、整った可愛らしいかたちをしていて、心躍ります。子供は大喜びすると思いますが、おじさんの私でもワクワクしました。

ひょうたん山

一面が黒と朱のスコリアで覆われています。この日私はサンダルで歩いてしまいましたが、一般的にはサンダルだとこれらの火山礫で足を怪我するので、ちゃんとしたハイキングシューズを履いたほうが良いです。

ひょうたん山

南方方面の風景です。遠くの船の手前に見えているのは「サダドー岬」。あの船は三池港の近くで護岸工事をしているようでした(船から海中に土砂を落としていました)。

ひょうたん山

植生で特に目立ったのはイソギク。開花期は10〜12月とのことなので、これから花が咲くのかもしれませんね。白い縁取りがよく目立つ葉っぱだけでも生き生きとしていて、立派でした。大島の三原山では見たことがないかもしれません。「磯」菊というだけに、海の近くでないと生えないのでしょうか。少し多肉植物っぽい雰囲気があるように思いました。

ひょうたん山

ミニハイク・ミニお鉢めぐり、という感じです。直径100m・深さ30mの小火口を見下ろせます。遠くに見えているのが雄山。絶景ですね。体力に自信のない方でも短時間でこの風景を目にすることができます。

ひょうたん山

手前側の礫が朱色っぽいのは、溶岩が高温で酸素と反応したからでしょう。いまから83年前の噴火でした。当時は海側にもうひとつ、30m低いところにも火口があり、2つを横から見るとひょうたん形だったのが名前の由来だそうです。三宅島の他の名所、メガネ岩のように片方が波の侵食で失われてしまったところが似ていますね。

お鉢を反時計回りにぐるりとめぐり、振り返ってみたところ。大島の三原山ほど大きい火山石は少ないので、こちらのほうがだいぶ歩きやすいと思います。

ひょうたん山

コンパクトながらも火山・海・空のエッセンスがギュッと濃縮された「火山の箱庭」のような風景で、想像力をかきたてられる満足感の高い山でした。すごく良かったですよ。間違いなく名勝地です。

三七山

いちど三宅一周道路に戻り、南進すると、すぐ「三七山園地」の駐車場が見えてきます。

三七山

三七山(さんしちやま)とは発音はしづらいし、ずいぶん覚えにくい名前だなぁ、とこの時は思ったのですが、この山が生まれたのが1962年=昭和37年なのです。なるほど、だから三七山という名前になったのか! 時代こそ違うものの、この山をつくったマグマはひょうたん山と同じ雄山北東山腹から流れてきたものだそうです。その意味でひょうたん山の弟、みたいな感じですね。

三七山

こんもりとした荒漠とした丘で、ひょうたん山のようなカルデラ的なものはありません。こちらはススキがきれいでした。

三七山

しかし三七山頂から北を見ると、ひょうたん山を俯瞰できて素晴らしい眺めでした。これを見るためだけにも登っておきたいところ。ひょうたん山よりちょっとだけ標高が高い。

ひょうたん山

ひょうたん山と三七山を歩き終えて

ひょうたん山も三七山も道路のすぐそばにあり、山頂までは10分くらいだったりします。しかし海沿いということもあり、大島の三原山と似ていながらも独特の雰囲気があって飽きませんでした。

三七山から見たひょうたん山

ひょうたん山には休憩に適した場所はなかったのですが、三七山園地には東屋やベンチがあるので、お弁当を持ってきてそこで食事休憩するのも良いかもしれません。三七山園地には、トイレもあります。近くに自販機や商店などはまったくないのでご注意。

三宅島は過去100年間で、1940年(昭和15年)・1962年(昭和37年)・1983年(昭和58年)・2000年(平成12年)と噴火しています。全体的に伊豆大島と形状的にも地質的にもよく似たところがあると思いますが、観光地としての整備があまり進んでいないところ・人の手がまだあまり入っていない雰囲気があり、それがかえって魅力的に思える島でした。

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著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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