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狩倉山と三ノ木戸山:奥多摩の石尾根縦走路でスルーされがちな寄ってみると発見があるマイナーなピーク

狩倉山・三ノ木戸山とは

狩倉山(かりくらやま・1452m)と三ノ木戸山(さぬきどやま・1177m)は、東京・奥多摩の雲取山から東に続く石尾根縦走路において、六ッ石山(むついしやま)の東にあるややマイナーなピークです。

狩倉山の山頂標識

狩倉山については地理院地図にも名前が載っておらず、分県登山ガイド「東京都の山」では六ッ石山のページで名前は登場するものの、紹介されているコースでは巻き道で迂回しているので、すぐ近くを通りながらも山頂に登ったことがない方もいるかもしれません。三ノ木戸山も同書ではコースに含まれていません(なお同書では「さんのきどやま」と表記しています)。

三ノ木戸山の山頂標識

しかし実際に立ち寄ってみると、奥多摩の石尾根がどのように続いているかについて、イメージが膨らむと思います。この記事では筆者が狩倉山と三ノ木戸山に登ってみた日の歩行記とともに、ガイドブックではスルーされているこの二山をご紹介したいと思います。

狩倉山・三ノ木戸山へのアクセス情報

狩倉山と三ノ木戸山は六ッ石山から奥多摩駅に続く縦走路沿いにあります。これらの山に向けて登るというより、鷹ノ巣山や六ッ石山方面から石尾根を下ってくる、あるいは奥多摩駅から石尾根を登ってくる時に立ち寄る、というのが一般的なシナリオかと思います。

■ 狩倉山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)

最初に六ッ石山を登るのであれば、JR奥多摩駅からバスに乗り水根、またはトイレのある隣の奥多摩湖で下車しハンノキ尾根登山道へ。六ッ石山〜奥多摩駅コース(歩行距離10.6km・歩行時間5時間45分)にプラス1時間弱を計画に加えると良いと思います。

■ 三ノ木戸山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)。かなり平べったく、広いピークであることがわかります。

六ッ石山の西で最初に「ゴツゴツした岩の崖」を巻道の左側に見かけたら、それは狩倉山への入口。その後、石尾根縦走路が終わる頃に「右になんかピークがありそう」な小さい岩塊を見かけたら、それが三ノ木戸山への入口です。次のセクションで実際に見ていきましょう。

私が歩いた狩倉山・三ノ木戸山

狩倉山

ここからは2023年3月中旬、筆者が狩倉山と三ノ木戸山を歩いた時の模様をご紹介します。この日は六ッ石山〜奥多摩駅のコースを歩いたので、六ッ石山から話をはじめましょう。

六ッ石山

六ッ石山頂から「鷹ノ巣山・石尾根縦走路」方面に下ります。すると分岐となり、左が鷹ノ巣山方面。右が奥多摩駅方面です。六ッ石山は石尾根縦走路から少しだけ外れているわけです。

石尾根縦走路

さて石尾根縦走路を東に250mほど進んでいくと、左側に「ゴツゴツした岩崖」が見えてきます。

石尾根縦走路

分県登山ガイドでは右側の巻道が案内されています。しかし、左の岩が実は狩倉山への道なのです。「狩倉山はこちら」などという道標はないので、スルーしてしまう方も多いのではないでしょうか。ここでは一旦、右の巻道を直進するとどうなるか、見てみましょうか。

石尾根縦走路

巻道の先で、石尾根縦走路の楽しくも長い下りの防火帯と合流します。しかし、背後(左)を振り返ってみましょう。

石尾根縦走路

何やら立派な防火帯の道が続いているではないですか。そして左のこの道は、石尾根の自然な延長になっているらしいことが想像できます。ここにも「狩倉山はこちら」などという標識はありません。

石尾根縦走路

頑張って登っていくとゴロゴロした岩が散見されるようになり、やはり石尾根感があります。ここを歩かないのは、少しだけもったいない感じがします。ここは、区間こそ短いのですが、結構な急登で登りごたえがあります。

石尾根縦走路

登りきるとなだらかなピークに出ます。これが狩倉山の山頂…なのでしょうか? 高度計を見ると標高は1452m近くなので(六ッ石山と27mしか違わない)、ここが狩倉山頂だろうかと思ってしまいますが、山頂標識はすぐには見当たりません。

石尾根縦走路

左側(西側)を向くと、尾根道が続いています。この向こうに、先に紹介した「ゴツゴツした岩崖」があります。両側から登ってこられるのです。後でこの尾根道を通って巻道との分岐まで戻ってみましょう。

石尾根縦走路

あらためてピーク付近をよく観察すると、木に1枚の札が下がっています。「奥多摩駅→」という手書きの案内があります。

石尾根縦走路

しかし板をひっくり返してみると…「カリクラ山・狩倉山」と書かれたかすれた文字が! 40m先とあります。狩倉山は石尾根を外れた、右側の樹林の中に隠れているのです。

狩倉山

ほんの少し歩くと(登る必要はなく水平移動)、谷側に狩倉山の山頂標識が2つあります。下の写真の真ん中の木の両隣に見えている木にぶらさがっています。ここが狩倉山のピーク。少し見つけにくいと思います。

狩倉山

何の特徴もない山頂です。また、ここは東京農業大学の演習林であることが示されており、恐らくそういう事情もあって分県登山ガイド「東京都の山」では積極的に案内していないのかもしれませんね。

狩倉山

しかしこんな立派な山頂標識がありました。手書きの旧タイプ(本記事冒頭の写真)とこのモダンなタイプの2つがあり、どちらも味わいがあります。

狩倉山

さて、ここで六ッ石山方面からの巻道で見上げた岩崖のほうに下っていきましょう。尾根道です。歩けなくはないので、石尾根縦走路を歩くのならここをスキップするのはやはりもったいない感じがします。

狩倉山

たどり着いた岩崖はいろいろな降り方ができそうで、岩で遊んでも良いですし、安全に降りられる巻道も両側にあります。

狩倉山

岩の上から見下ろすと、六ッ石山から辿ってきた縦走路が見えます。

狩倉山

下に降り、巻道の近くに立ってあらためて岩崖を撮ってみました。こう見えて安全に登っていけるので、六ッ石山からの道でこれを見かけたら入って行ってみてはどうでしょうか。樹林の中の狩倉山の山頂標識は、見てもあまり意味がないかもしれませんが、狩倉山に至る両側の道は「隠れミニ石尾根」になっていることを体感できます。

狩倉山

今回は巻道も紹介するために東側から狩倉山に登りましたが、六ッ石山方面から来る時はこの岩崖から直接登って行ったほうが体力はセーブできるでしょう。

三ノ木戸山

次は三ノ木戸山に行ってみましょう。狩倉山直下から1kmほど続く石尾根縦走路を存分に楽しむと、その終わり近くでこんな風景が見えてきます。左は奥多摩駅方面に向かう巻道。しかし右に巻いていくと(パラパラと点在している尾根上の岩のほうに入って行ってもOK)、三ノ木戸山に至ります。ここにも「三ノ木戸山はこちら」という案内板は出ていません(昔はあったらしい)。

三ノ木戸山

一般的には左の巻道で奥多摩駅方面に下るのですが、ここもまた石尾根の続きであることがわかります。明瞭な踏跡があるので、いったん右に巻きながら直進してみましょう。

三ノ木戸山

岩場を過ぎると平坦なとても広いピークとなります。標高1177m。

三ノ木戸山

奥までのんびり歩いていくと、1本の木にひっそりと「三ノ木戸山」の山頂標識があります。これもよく観察しないと発見しにくいかもしれません。

三ノ木戸山

この一帯も東京農業大学の演習林なのだと思います(シカ柵や作業小屋がありました)。立入禁止の表示はなく、地理院地図にもここまでの徒歩道は表示されているので、マナーを守ればここまでやって来ても良いのではないでしょうか。特に見るべきものがあるわけではないのですが、開放的な場所なので大休止にも良いと思います。

三ノ木戸山

来た道を引き返し、分岐路手前の岩場に戻ってきました。

三ノ木戸山

ここも狩倉山の西側同様、ある程度まとまった岩塊と遊べます。岩質は奥武蔵でよく見かけるチャートとはだいぶ違う感じです(黒っぽくてチャートより少しもろい印象)。

三ノ木戸山

奥多摩駅に下る左の巻道は粘土質で、何度か歩いていますがいつも濡れていて滑りやすいです。三ノ木戸山のあたりは岩と粘土が混ざっているような作りになっている印象を受けます。なお三ノ木戸山をどこまでも西進すると左の巻道と合流するようですが、大学の管理道かもしれません。

三ノ木戸山

鷹ノ巣山、あるいは六ッ石山から石尾根縦走路を下っていく時、狩倉山と三ノ木戸山に寄らない方のほうが多いかもしれません。しかしどちらも石尾根の自然な延長という感じがあり、行ってみると「こういうふうに繋がっているのか」と地理の理解が少し深まるように思います。時間と体力に余裕がある時はちょっと寄り道してみてはどうでしょうか。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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