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長瀞の岩畳をじっくり歩いて船からも観察してみよう 幽玄なジオパークに浸る贅沢な90分

長瀞渓谷とは

埼玉県・秩父盆地北端に位置する名勝・長瀞(ながとろ)。眺望にすぐれる宝登山や秩父グルメも楽しめる観光スポットですが、長瀞駅から徒歩数分の荒川にある「長瀞渓谷(長瀞の岩畳)」も歩きがいがあり、ガイド付きの周遊船もかなり満足感が高いので個人的には是非ともおすすめしておきたい名所です。なお長瀞の「瀞」は「水が深くて流れがゆるやかなところ」の意。

長瀞渓谷

長瀞の岩畳は幅80m、長さは500mほどもある巨大な一枚岩の岩石段丘で、なんと地下では四国九州まで連続しているものの一部がここに露出しているのだそうです。パイのように積層した岩畳の感触を楽しみながらのんびり歩くのも楽しいですし、ガイド付きの周遊船に乗れば水の澄んだ荒川を泳ぐ魚の姿や、ダイナミックな岩壁とその植生を近距離から観察できたりします。

長瀞渓谷

たとえば伊豆大島のジオパークが好きな方なら、長瀞渓谷はきっと気に入ることと思います。岩畳の主だったところを歩くだけなら1時間もかかりませんし、観光船を追加しても90分くらいです。宝登山ハイキングの前後に訪れてみてはどうでしょうか。この記事では2023年3月末、筆者が実際に長瀞渓谷を訪問した時の模様をお伝えします。

長瀞の岩畳を歩く

秩父鉄道・長瀞駅を出て、西の荒川に向かいます。商店街を抜けると長い階段があり、ここが長瀞渓谷の入口となります。徒歩7分くらいです。この日は平日で朝の9時頃でしたが、観光船は既に営業開始していました(午後はおおむね2時半頃が最終受付だそうです)。

長瀞渓谷入口

しかし日差しがまだいまひとつだったので、船は宝登山からの帰りに試すことにして、まずは岩畳を歩くことにしました。下は便利な地図なので参考にされて下さい。主な見どころは岩畳・四十八沼・ポットホール・白鳥島(横臥しゅう曲)・秩父赤壁・男滝と女滝・虎岩などです。このうち「虎岩」まで歩いてしまうと隣の上長瀞駅近くまで行ってしまうので、そこに至る「哲学の道」は今回はパスしました。

岩畳付近観察マップ

下は岩畳に登りはじめてすぐのところです。長年水に洗われてきているので、触るとツルツルしていて気持ち良いです。現在でも台風後の増水時にはここがすっぽり水没することもあるのだそうです。

長瀞渓谷

対岸(荒川右岸)に見えているのは「秩父赤壁」と呼ばれている岸壁です(伊豆大島の赤ダレのような赤さは見られません)。船に乗ると近くから見ることができます。

長瀞渓谷

岩畳は特定のコースを歩くわけではなく、好きなところを好きなように歩いて良いようです(一部立入禁止エリアあり)。これがまた楽しいところ。無理のない程度に冒険してみても良いでしょう。

長瀞渓谷

この日、植物としては群生するユキヤナギの白い花が印象的でした。ユキヤナギは水没しても耐えられる、適応力の高い植物なのだそうです。ほかにはフジも群生しているそうです。

ユキヤナギ

ユキヤナギがあまりに可愛らしいので接写。ちなみに前回この岩畳を訪れた時は霧が立ちこめていて(やはり早朝)、それはそれで幽玄な雰囲気で素晴らしかったですよ。

ユキヤナギ

下は「ポットホール(甌穴・おうけつ)」と呼ばれる穴です。礫(れき・つぶて)が岩のあいだの小さい穴に入り、そこが水没すると礫がその中でぐるぐると回る。するとその穴がだんだん大きくなって、これができます。岩畳を歩いていると大小のポットホールをいくつか見つけることができます。このポットホールはかなり大きいもの。幅10cm〜2mのものがあります。おたまじゃくしが泳いでいました。

ポットホール

これは一枚岩の岩畳の終点付近です。この先は左岸沿いの「哲学の道」を歩いていくと「虎岩」に至りますが、この日は宝登山に行くので散策はひとまずここで終了です。それにしてもダイナミック。ジオパークの名にふさわしい名所と言えるでしょう。

長瀞渓谷

長瀞渓谷入口までの帰路は、大小様々な流路跡である「四十八沼」を眺めながら歩きました。様々な水生昆虫が生息するらしく、よく見るとこの水路はしじみのような貝殻がたくさん沈んでいました。

長瀞渓谷

長瀞渓谷一周船に乗ってみる

さて岩畳を歩いてからは宝登山に登り、小動物公園を見物してロープウェイで下り、またこの岩畳に戻ってきました。ちょうど良いタイミングで「長瀞渓谷一周船」が出ていたので乗船。一周船は約20分かけて渓谷入口付近をゆっくり周遊するというもの。実はこの日、荒川の水量が少なかったため、より長距離で急流を下る「長瀞ライン下り」はお休みだったのです。

長瀞渓谷一周船

このように荒川が渇水している時はこの一周船に切り替わるようです。料金は大人1100円・子供700円。時刻表があるわけではなく、ある程度の人数が集まり次第、順次出発する仕組みです。「長瀞ライン下り」の場合は船頭さんが2人、「長瀞渓谷一周船」は1人。船頭さんは全部で20人くらいいると聞きました。乗船したら救命ベストを着ます。

長瀞渓谷一周船

船頭さんが長瀞渓谷のなりたちや見どころ、荒川の様子などをおもしろい冗談を交えながらお話してくれます。観光バスのツアーのようです。ゴールデンウィークなどは大変込み合うのでやはり平日の早朝がおすすめとのことでした。

長瀞渓谷一周船

このあたりの水深はこのくらいですよ、とか、魚の種類は高知の四万十川の次に多いんですよ、とか、洪水の時は階段手前の自動販売機のあたりまで増水するんですよ、等々、現場の人しか知らないような豆知識をお話してくれるので全く退屈しませんでした。皆さん大人も子供も大満足。

長瀞渓谷一周船

これは渓谷入口の対岸にある「白鳥島(横臥しゅう曲)」です。岩の縞模様が曲がっているのは、過去に大きい力が加わったことの痕跡なのだそうです。

白鳥島の横臥しゅう曲

これは「秩父赤壁」。伊豆大島の「赤ダレ」は火山から吹き出した溶岩が大気中の酸素と反応して派手な赤色になったわけですが、この赤壁は岩から鉄分が染み出して少し赤くなったものだそうです。しかしあまり赤さは感じませんでした。でも立派な岩壁。ちなみに荒川のこの一帯(旧親鼻橋から旧高砂橋まで)は国指定の天然記念物になっているので、勝手に対岸に渡ったりはできないようです。

秩父赤壁

環境が保護されていることもあってか、水質がとにかく良い感じがしました。あちこちで魚が跳ねています。すると船頭さんが「船の先端の向こうにカワセミがいますよ」。えっ!? 本当だ、カワセミとハクセキレイが岩の上に!

カワセミとセキレイ

カワセミの写真など、狙ってもそうそう撮れるものではありません。標準ズームレンズの90mm側で撮ったものを拡大してみました。カワセミさん、何かお魚をくわえています。船頭さんのお話では、警戒心の強いカワセミがこんなに船が近づいても逃げないのはなかなかないですよ〜、珍しいですね!とのこと。いやー、ラッキーでした。

カワセミ

長瀞渓谷、やっぱりおすすめですね。これまでも何度か来たことはあるのですが、船に乗ったのはこの日がはじめて。ものすごく楽しめました。もっと遠いところまで行く「ライン下り」は、台風通過後が狙い目というお話も聞きました。長瀞は何度でも再訪したいですね。この日は外国人観光客の姿も目立ちました。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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