2023年4月初旬、埼玉県・小鹿野町の二子山(別名クレイジーマウンテン)でカタクリの花に出会いました。自分で言うのも何ですが、ちょっといい写真が撮れたのでご紹介します。いい写真、というかライティングの条件が良かったのです。そして、それには当然の理由がありました。
光合成する期間は年に2ヶ月間だけ
カタクリの花を見かけたのは、二子山の股峠の近く。西岳から降りてくる時の尾根道でした。下の写真の中央で○で囲ってあるあたりです。群生とまでは行きませんが、2〜3の花があったと思います。左側の○には「ニリンソウ群生地」が近くにあると読めます。Wikipediaによると、カタクリは「キクザキイチゲとニリンソウなど同時期に同じ場所で開花することがある」のだそうです。
カタクリは1年のうち、地上に葉を出すのがわずか2ヶ月間。そのあいだに頑張って光合成して、球根に栄養を蓄えます。残りの10ヶ月は地上から姿を消してしまう。そして8〜9年経ってはじめて花を咲かすことができるのだとか。光合成できる期間が短いため、花を咲かせられるほど成長するまでに長い時間がかかるわけです。
そして2ヶ月という短い期間で充分に光合成するためには、日当たりの良い場所が必要。自ずとそういう場所で成長する。このカタクリが生えていたのは、南に開けた峠です。木々もまばらで、日当たりが良かった。すると良い光線で写真を撮れたのも当たり前、というわけです。
花を見られるのは2週間だけ
カタクリの開花期間はわずか2週間。そのため英語では”spring ephemeral”(春のはかなきもの)と呼ばれるタイプの、春の植物です。地上で2ヶ月過ごしたら、あとは地面の中でじっとしている、という植物。下向きに花を咲かせているのがおもしろいですね。葉っぱは薄い茶色の混ざった、まだら模様。
「片栗粉」の「片栗」はもちろんこのカタクリに由来します。むかしはカタクリの根茎から片栗粉を作った。その頃の片栗粉には、腹痛(Wikipedia日本語版)や発疹(Wikipedia英語版)に効くという薬効があった。しかし現在市販されている片栗粉はジャガイモやサツマイモから抽出されたでんぷんが原料で、薬効はなし。本物のカタクリからだと、あまり量が取れないからでしょう。
しかしこのカタクリ、寿命はなんと40〜50年もあるのだとか。はかないのは花だけですね。このカタクリはいま何歳なのでしょうか。最低でも8歳。もしかすると私と同じくらいの年齢だったりするのかもしれません。
英語圏で「子鹿ユリ」と呼ばれる理由
カタクリは日本原産と言われており、学名も”Erythronium japonicum”。英名は”Asian fawn lily, Oriental fawn lily, Japanese fawn lily”。「アジアの・東洋の・日本の子鹿ユリ」という意味です。なぜ「子鹿」と呼ばれているのか。それは2枚の葉っぱを見ればわかります。子鹿の耳から来ているんですね。
日本語の「カタクリ」は「栗の実の片方」から来ており、葉ではなく球根から取られた名前になっているのもおもしろいですね。
■ 撮影機材:LUMIX GF5 / LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. H-X09(とてもいいレンズ!)