山の動植物

ずんぐりしてブサ可愛いイチモンジセセリに鉄塔跡地の廃墟で出会った(埼玉・ウノタワ〜鳥首峠間にて)

8月中旬、埼玉県のウノタワを目指して歩いている時に、廃墟のような場所でずんぐりした可愛い蝶を見つけました。セセリチョウ科の蝶で、後翅の裏に銀紋が一文字状に並んでいるため「イチモンジセセリ」と呼ばれています(学名:Parnara guttata / 英名:The Straight Swift)。

イチモンジセセリ

蝶と言うには胴が太く短く、ずんぐりむっくり。茶色いし、優雅というよりユーモラスな姿で、最初は蛾の仲間かと思ってしまいました。

送電線鉄塔跡のコルにて

撮影場所は少し不思議なところでした。この日は名郷のバス停から鳥首峠を経てウノタワを目指して歩いていました。ここは鳥首峠の先、「奥武蔵登山詳細図」という地図では1059mの印があるところの近くで、かつて送電線鉄塔(安曇幹線328号)があったとされています。鉄塔基部のコンクリートが残っており、蝶・ハチ・トンボ・ニホントカゲ等々、多くの昆虫が見られる場所です。

天神山近くの送電線鉄塔跡(1059m付近)

天神山近くの送電線鉄塔跡(1059m付近)

■ 地理院地図では下の十字線のあたりです。1091m地点がウノタワで、その南には地理院地図には名前がない天神山(1130m)があり、そこからさらに少しだけ南に下ったところにあります。あまり広くはないですが、窪地・コルで、印象に残る場所です。

アザミに群がるイチモンジセセリ

3匹のイチモンジセセリがアザミの花に群がっていました。かなり近付いても逃げず、夢中になって蜜をチューチュー吸っています。オリンパスの標準ズーム12-45mm F4で接写しました(テレ端・F4開放)。セセリは「挵」と書くのですが、「挵る(せせる)」とは、尖ったもので繰り返しつつく・つついて掘る・ほじくるといった意味で、まさにそんな風に蜜を吸っていました。

イチモンジセセリ

上の写真のクローズアップです。イチモンジセセリの胴体が短く太っているように見えるのは、実は胸の筋肉が発達しているからで、羽ばたきはかなり力強いのだとか。おデブさんというより、大胸筋のデカいボディビルダーのような存在なのかもしれませんね。

イチモンジセセリ

目が大きく、触覚も独特な形状をしています。ムクムク、フサフサしていてぬいぐるみのようです。蝶の世界ではブサイクなほうなのかもしれませんが、このブサ可愛い感じが個人的にはたまりません。

イチモンジセセリ

同じ場所には他にツマグロヒョウモンなどの蝶もいて、みんなでアザミをシェアしていました。ここは何度か来ていますが、木が伐採された日当たりの良い場所で、昆虫たちにとっても有名なランドマーク・集いの場になっているのでしょう。鉄塔の土台の下にはニホントカゲも住んでいます。

この日はやたらと蒸し暑く、全く登山向きではなかったのですが、このあたりから鹿の鳴き声が遠くで聞こえはじめ、大持山の近くではニホンジカを撮ることもできて大変良い一日になりました。目的地のウノタワが季節的にあまり良くなかったので、この鉄塔跡地でもっと長居をして写真を撮っていたら良かったかもしれません。

撮影データ:OLYMPUS OM-D E-M5 III / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO / 2022年8月19日

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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