埼玉県・奥秩父のちょっと地味で不気味な山、熊倉山(1427m)。山頂から日野コースで下ると沢がやがて寺沢川になるのですが、その上流でこんなキモかわいい「奇岩」ならぬ「奇氷」をたくさん見かけ、写真撮影に熱中しました。動物でも植物でもないのですが、このブログの「山の動植物」というカテゴリーに記録を残しておきたいと思います。
林道三又線の終点近くにて
場所は林道三又線の終点近くです。踏み跡は明確でないところが多く、うっすらと積雪もあり、ところどころにある親切な赤いテープがなければどこを歩いたら悩んでしまうような沢です。飛び石で渡らないといけないところも結構あります(楽しい)。
■ 地理院地図では十字マークのあたりです(縮小・拡大できます)。破線は日野コース。熊倉山から下りてきて、日野コース登山口に至る少し前のところで左側にガードレールが見えました。それが林道三又線の終点です。
形状が豊富でカオスすぎる氷だらけ
足元を見ると、岩の表面や川に落ちた枯れ枝に不思議な形状の氷柱(氷塊と呼ぶべきか)がムクムクと発生していました。垂れ下がった剣のようなもの、風船のようなまるいもの、たくさんの泡が集まったようなもの、雲のようなものなど、実に様々な形状の氷柱が続々と姿を現します。
あしがくぼの氷柱も魅力的ですが、100%天然とも言えるこれらの氷柱はなぜこうなったのか容易に想像できないような、より複雑な造形になっています。鉱物と植物と気象現象のコラボです。
近付いてよく観察すると、枯れ枝や落葉があるとそのまわりには特に不思議な氷柱が生まれるようでした。下の写真のものなど、右側のまるい氷はガラス細工か綿あめのようにも見えます。しかし枝全体が氷で覆われるわけでもなく、岩の表面にできた氷と繋がったり、繋がらなかったりして、なんともカオスな景観です。一定のパターンがあるようにも、ないようにも見えます。
いったいどこからどういう順番で凍っていけばこんな形状になるのか想像できません。これなど鹿やカブトムシのサナギの角、キノコ、男性器のようにも見えます。
下の写真は、岩と岩のあいだの窪みにカメラを突っ込んで撮ったものです。この日は超広角レンズ(18mm相当のSUMMILUX 9mm/F1.7)1本しか持っていなかったので、自分でギリギリまで氷柱に近付く必要がありました。中望遠の単焦点レンズがあれば、もっと美しい写真をたくさん撮れたと思います。薄い氷にできている皺は、まるで葉脈のようにも見えます。
左下の枝まわりについた太った氷柱などは、ニョキニョキしているというか、虫みたいというか、ユーモラスです。キモい、という言葉は最近差別的なニュアンスを持ってしまうこともあるようですが、良い意味でキモい、キモかわいい姿の氷たちです。なんならエモいとも言えましょうか。心揺さぶられます。
少し引いて沢を撮ったところ。こういうところを見かけたら、岩の上にしゃがんだり這いつくばったりして、超広角レンズをギリギリまで寄せて撮っていました。バリアングルモニターのカメラだとこういう状況で活躍します。しかし水しぶきがレンズガードやカメラに飛んできたり、足元は濡れる、気温も低くて寒い、滑らないよう気を使ったりとなかなか体力を使いました。
この日は7時間かけて熊倉山を歩きました(秩父鉄道・白久駅から城山コース、下山は日野コースで武州日野駅ゴール)。沢の源頭近くではより大きいサイズの氷柱も見られましたが、三又林道終点近くのこの付近で見られた氷柱のほうがよりダイナミックかつ複雑な形状のものが多く、楽しめました。
熊倉山自体が素晴らしく魅力的な(そしてやや危ないところもある)山なのですが、ここで写真を撮るためだけにやってくる価値もあると思いました。温かいコーヒーなど沸かしながらここで1〜2時間粘って撮影会、というのも面白いかもしれません。
撮影データ:OLYMPUS OM-D E-M5 mark III, LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. H-X09 2023年1月30日