新島の宮塚山(みやつかやま・ピークは432m)を歩きたい、と考えて旅の資料を眺めると「富士見峠コース」なるハイキングコースが紹介されています。ゴールは富士見峠展望台(標高370m)。宮塚山はそのさらに先まで歩いていけるのですが、この記事ではまず一般的な「富士見峠コース」をご紹介します。展望台から先の様子については、続編でご紹介します。
いきなり余談ですが、伊豆諸島には「宮塚山」という名の山が他にもあります。利島の御神体とされるのものも宮塚山ですし、神津島にも天上山のやや北東寄りに宮塚山があります(林道宮塚線という道があり、天上山の白島7合目まで続いています)。三原山も大島と八丈島、両方にあって面白いですね。
なお新島の宮塚山は、山頂に至る登山道はありません。
富士見峠展望台の位置・アクセス
この記事で目指すゴールとなる富士見峠展望台は、地理院地図上ではこの位置です。名前のない林道をじりじりと北西に登っていき、道が大きく北東に曲がる手前のあたりにあります。地形図では西側がすごい谷になっているのがわかりますね。
これから紹介する富士見峠コースの入口から富士見峠展望台までの所要時間(登り)は、のんびりペースの筆者の足で50分弱でした。旅行パンフレットではざっくり1時間と紹介されています。
コース入口付近には自販機もトイレもなく、道の先にもまったくないので飲み物の確保はお忘れなく。
富士見峠コースを歩いてみた
ここからは2024年12月、筆者が実際に富士見峠コースを歩いた時の模様をお伝えします。私はこの日羽伏浦キャンプ場でテント泊していたため、キャンプ場前を通る「新島本道」から西に分岐しているこの道からコース入口に向かいました。左に行くと新島空港です。
上の写真は、地理院地図では下の十字マークの位置になります。黄色い線の道が新島本道。ひょうたん型の島の中央の谷のところに、島の東西を結ぶ大きい道が2つ通っているところは神津島とよく似ています。新島ファミリーパークと書かれているところがキャンプ場です。
富士見峠コース入口に向かう途中、「新島Gホテル」という看板の大きい三階建ての建物を見かけました。入口の舗装路から飛び出している草の様子を見ると、結構長いあいだ人の出入りがなく廃墟化しつつあるように見えます。
調べるとこれは「新島グランドホテル」で、2021年4月から現在に至るまでコロナ禍がきっかけとなって休業しているようです。建物は使っていないと傷んでしまうので、はやく復活してほしいものですね。美しい羽伏浦海岸がすぐそばにある好立地なので、需要はあると思うのですが…
さて、すぐ富士見峠コース入口に着きました。「富士見峠はこちら!」とか「宮塚山はこちら!」といった看板はありません。しかし入口には「自転車通行禁止」の看板がありました。歩行者・自動車・オートバイは通っても良いけれど、自転車はダメ。何か事情があるのでしょう。
この入口の地理院地図の位置はこちら。北に向かう舗装路はこれだけなので、特に迷うことはないと思います。
舗装されたゆるやかな林道を登っていきます。傾斜が大きく変わるところはなく、一定のペースを保って歩いていけます。ハイキング慣れしていない方でも歩きやすいコースだと思いました。
歩いていて興味深かったのが、道路脇にかなりの数のシカ罠が設置されていたことです。山の奥の奥まで設置されていて、この日も有害鳥獣パトロールの仕事をされている方を見かけました。私は新島にのべ10日くらいは滞在していると思うのですが、少なくとも島の南部でシカを見かけたことはありません。宮塚山から北には結構いたりするのでしょうか。
この道は、軽自動車ならギリギリすれ違えるくらいの幅です。有害鳥獣パトロールの方、展望台の先にある電波塔で仕事をされている方、そしてハイカーの存在を考えると、自転車乗りの方が向こうからハイスピードで下ってきた場合、確かに少し危ないかもしれません。自転車でも楽しそうな道ですが、通行禁止にしているのはオーバーツーリズムにさせないための新島なりの決断なのだろうか、と思いました。
展望台に着く少し前でも、眺望が開けたところがありました。大体どんな風景が見えるのかわかってきました。
ほどなくして構造物が見えてきました。ここが間違いなく展望台です。
新島名産のコーガ石で組まれたピラミッドのようなものがあります(もろいからイタズラ書きの数がものすごかった)。このてっぺんに登ると、素晴らしい眺望が得られました。このピラミッドはナイスアイデアですね(前浜海岸にも似たようなものがあって登れます)。
現地の案内板です。富士見峠は標高370m地点にあり、かつてこの付近は「ギンデー坂」と呼ばれていた、とあります。第二次大戦中の話が少し書かれていますが、新島は伊豆諸島の中で軍事的に非常に重要な島で、兵隊の訓練も新島で行われていたと文献で読んだことがあります。また周辺の島の人々は、かつてクルマの免許を新島で取ったとも聞きます。新島は伊豆諸島の中でも大都会だったのでしょう。
先のコーガ石のピラミッドに登り、南方面を向いて撮った写真です。東海汽船の客船が発着する新島港(前浜港)、連絡船にしきが発着するB堤、無人島の地内島のほか、奥に式根島と神津島がよく見えます。
少し左手を見ると、こんもりと盛り上がった台形の山が見えます。あの一帯は「向山」と呼ばれ、右側の海寄りに石山トレッキングコースがあります。神津島でいうと向山のあたりは秩父山、八丈島でいうと三原山に相当するような位置関係になると思います。集落の密集具合も、新島と神津島はよく似ているなと思わされます。
富士見峠展望台の先に、舗装路が続いていました。しかし観光協会や東海汽船のターミナルで配布されている新島旅行ガイドには、この先に何があるのか、歩いて行けるのか、歩いて行っていいのかなど、まったく書かれていません。一般的にはここでお帰りください、ということなのだろうと思います。
下の写真は、宮塚山の行き止まりまで歩いてから下山した時にふたたび富士見峠展望台で撮った写真です。ここは夜景も大変素晴らしいと聞いているので、機会があればいつか夜にまた来たいと思います。林道入口からここまでは往復2時間弱。「のんびりした旅行中にはちょうどいい」ボリュームのハイキングコースではないかと思いました。
さてこの展望台の先には何があるのか。次回の記事でご紹介します。
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