秩父山とは
神津島(伊豆諸島)の山、といえばまず天上山ですが、ハイキングを楽しめるもう一つの山に秩父山があります(ピーク280.4m・現地標識では282.9m表記も。なお天上山と秩父山の間にある高処山には、一般的な登山道はないと思います)。時間に限りがある旅行者は秩父山にはあまり登らないかもしれませんが、島民の方にとっては大切な信仰の山なのだそうです。
山頂近くには「秩父堂」と、その隣にはコの時型をした「やしろ様」と呼ばれる聖域があり、埼玉県の「秩父三十四札所」を偲んでここに再現したと言われる石塔や仏像があります。距離1.1km・2時間弱の、山の静寂を楽しめるハイキングコースです。
秩父山へのアクセス
秩父山登山口は神津島の東西を結ぶ「神津本道」沿いにあります。天上山の黒島登山口や白島登山口がある北寄りの峠道ではなく、そこから高処山(こうしょさん・たこうどやま)をはさんで南側にある舗装路沿いです。前浜港からも多幸湾からも、およそ3〜40分程度の距離です(どちらからも上りになります)。前浜港からは約2km。
下は地理院地図上の位置です。黄色い線が舗装路で、北側から南に下っている点線が登山道。同じ舗装路に下山するコースです。
どんな登山装備が必要?
秩父山は低山で、一部区間にロープはあったもののとくべつ足元が悪いところもないように思ったので、ローカットのトレランシューズやスニーカーでも十分登れると感じました。足腰に不安がない方でしたら、トレッキングポールも不要かと思います。なお登山口付近や山頂にトイレや水場はありません。飲料は1Lくらいは携行したほうが良いでしょう(登山口近くに飲料の自販機はあります)。
神津島は天気が変わりやすいため、風雨に備えてレインウェアは必携です。
私が歩いた秩父山
ここからは2024年11月、筆者が実際に秩父山を歩いた時の模様をお伝えします。登山口は峠道のピーク近くにあり、発見しやすいと思います。ちなみに高処山展望台を経て天上山登山口に至る道もこの近くにあります(天上山を歩いたらその道でここまでやってくるのもあり。高処山展望台までは上りになりますけれども)。
登山口の道向かいには赤いコカコーラの自販機があるので目印になります。この建物では、魚の干物を作られているようでした。なお秩父山は、地元の方が亡くなられた時にお参りに登る信仰の山なので、山歩きの際はくれぐれも失礼のないようにしたいところです。
山頂のお堂までは600〜700m。下りは4〜500mで、合計で1.1kmほどの短いコースになります。
鬱蒼、とまではいきませんが少し藪っぽい、いい山道です。歩いていて、最近行っていない埼玉県奥武蔵の柏木山に少し雰囲気が似ているな、と思いました。
素晴らしく独特な書体の南無阿弥陀仏。
緩やかな傾斜が多かった印象があり、息を切らすようなところはあまりなかったと思います。距離が短いので、ゆっくりのんびり、空気を味わいながら歩くのが良いと思いました。このあたりの道は、1〜2月は椿のトンネルが楽しめるそうです。
ここは旅のパンフレットで「月待塔」と書かれていたところの近くだったと思います(塔を見逃してしまって写真を撮り逃しました!展望台の手前に見えているのがそれかな?)。神津島の「月待」という民間信仰に由来するそうです。
ここは神津島の村落・前浜港を南側から一望できるビューポイントでした。
やがて見えてくる構造物が秩父堂です。
中には御本尊の十一面観世音菩薩など、多くの仏像が風雨から守られて安置されていました。
秩父堂前の案内板です。ここから東側入口まで500mなので、このお堂まではどちら側から登っても同じくらいの距離です。
お堂の隣にあるこのコの字型のエリアが「やしろ様」。34基の石塔があります。
旅のパンフレット(神津島観光協会作成の「神津百観音」)には次のように書かれてあります。
34基の石塔にはそれぞれ、厄除け、健康、長寿などのご利益がある。中でも、1番札所は一生食べ物に困らない三大施食(さんだいせじき)のひとつ「四萬部寺(しまぶじ)」、13番札所「慈眼寺」は目の健康、34番札所「水潜寺」はダイビングの上達を願う人がお参りする姿も見られる。
ピークの秩父堂を過ぎると、アンテナ施設(電波塔)が見えてきます。
山頂はこのアンテナの近くになるらしく、手前に280mの標識看板がありました。このあたりからは天上山や三浦湾を南側から眺められるようになります。
風がない時は完全な静寂に包まれる、素晴らしいクマ笹の細道です。天上山のほうにはこういう雰囲気の道はない(と思う)ので、やはり秩父山は歩く価値があると思います。リラックスできてとても気持ち良いところです。今風に言うとchillできる山です。
こういうベンチのような展望台がふたつあったと思います。どちらかでお昼休憩すると素晴らしくのんびりした時間を過ごせると思います。多幸湾から登ってくる場合は、多幸湧水で水筒においしいお水を汲んできてここでお弁当を食べたいですね。
天上山を南からこの高さで見られるのはここだけでしょう。
埠頭が伸びているところが三浦漁港、その向こうが近くにキャンプ場がある多幸湾、その先に見えているのが砂糠山(さぬかやま・190m)。埠頭の手前にあるのが「松山鼻」と「長っ崎」。その手前が三浦湾。天気が良い時はここから三宅島も見えるそうです。
この日は地元の方々が草刈りをされていました。挨拶を交わしつつ東側入口へ下山します。
東側入口はこんな見た目になっています。ここからスタート地点の登山口までは30分弱だったかなと思います。
東側入口のすぐ向かい側に三浦湾展望台があるので、ここも是非休憩していきたいところです。
三浦湾展望台は島の中でもかなり照度が低いところらしく、神津島の星空観察スポットとしても有名です(他にはヘリポート・よたね広場展望台・赤崎遊歩道・高処山展望台が星空観察向き)。
今回下山した秩父山の東側入口・三浦湾展望台から南に下っていくと、神津島空港に至ります。帰路が飛行機という方は、秩父山を歩いてから空港に徒歩で向かうのも良い組み立て方かなと思います。神津島初日に秩父山+集落散歩、翌日に早朝から天上山を歩くというパターンもいいですね。
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