ハイキングコース紹介東京都の山

三原山(八丈島):八丈富士とはかなり雰囲気が違う植生がおもしろいほぼジャングルな山

三原山(八丈島)とは

八丈島(東京都)には、有名な大きい山が2つあります。1つは八丈富士(854m)で、別名を西山と言います(リンク先で紹介しているので、詳しくはこちら↓をお読みいただけると幸いです)。

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八丈富士とは 東京都心から287km南方に位置する八丈島には有名な山が2つあります。ひとつは島の南東部にある標高701mの三原山(別名・東山)。もうひとつはこの記事で詳しく紹介する、東京諸島の最高峰・標高854.3mの八丈富士(西山)です。...

もう1つはこの記事で紹介する三原山(みはらやま・701m)。別名を東山と言います。日当たりが良く開放感のある八丈富士に対し、三原山はシダ植物をはじめとする豊かな植生を特徴とする、やや玄人好み(?)の静かでダークな秘境かな、というのが私の印象です。ピークは狭くひっそりとしていて、ピーク自体には特に魅力があるわけでもありません。しかし、道程はおもしろい。

三原山(八丈島)

三原山、というと伊豆大島の三原山を想像する方が多いかもしれません。八丈島の三原山の語源は不明ですが、大島の三原山同様、火口=子宮=御腹(みはら)に由来するのではないかと思います。火山としては、八丈富士よりもこちらの三原山のほうが最後の噴火がだいぶ前(有史以降は噴火していない)なので、自然がより深く感じられる山です。

観光客の大部分は八丈富士には登っても三原山には登らないことが多いせいか、踏跡が少なく、秘境的な趣のある山です。陽の八丈富士に対し、陰の三原山、という感じかもしれません。また植物に興味がある方にとっては、アプローチの林道も植物観察を楽しめるハイキングコースだと思います。絶景や眺望はあまり目当てにしないほうが良いと思います。

三原山へのアクセス情報

そもそも八丈島にはどう行く?

その前に、そもそも八丈島にはどうやって行くのかという問題ですが、八丈富士の紹介記事で詳しく紹介しているのでこちらをご参考いただければ幸いです。船なら東京都内から大体11時間、飛行機なら1時間です。

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三原山への登山ルート

三原山への登山コースは、少なくとも5パターン考えられると思います。

  1. 防衛道路(町立病院前バス停近く。島のちょうど中心)を出発し、防衛道路登山口から三原山に登り、ピストンで戻る
  2. 防衛道路から三原山頂を経て三原林道にアクセス、そこから樫立登山口へと下る(バス停は富次郎商店。※スーパーです)
  3. 上記の逆コース(樫立登山口→防衛道路登山口)
  4. 樫立登山口↔三原山頂のピストン
  5. 三原林道の「大池・小池」付近までクルマなどでアクセスし、そこから三原山頂までピストン(山頂への最短ルート)

■ 三原山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)

分県登山ガイド「東京都の山」で紹介されているのは2番目のコースで、近くの名所である「硫黄沼」と「唐滝」にも立ち寄る内容となっています(所要時間4時間15分)。

その2番目のコースは十分に日帰りできる内容だとは思いましたが、自然観察に大きい興味がある筆者の場合、1番目のピストンルートでなんと時間切れになってしまいました(硫黄沼と唐滝は後日に再訪する口実として取っておくことにしました)。詳しくは歩行記のセクションで後述しますが、コースタイムは若干余裕を見たほうが良いと思います。

なお、どのルートもトイレや自販機などはありません。水は1.5Lあったほうが良いと思います。

三原山の登山装備について

三原山を歩いてみて思ったのは、まず道が湿っていてぬかるみがあるので、グリップの良いシューズが不可欠であること(トレランシューズ的なものでも大丈夫。サンダルは不可)。結構滑ります。

また、あまり歩く人がいないせいもあるのか、10月初旬でも藪がものすごかったのでトレッキングポールがあると便利だと思いました。歩行のためには特に必要はなかったのですが「藪こぎ」するためにはあったほうがベター。また目の保護のために何らかのアイウェアは絶対に必要です(葉や枝が目に入ってきそうになります。かなり危ない)。

私が愛用しているトレッキングポールやサングラスについて下の記事で紹介してあるので、こちらも宜しければお読み下さい。

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さらにアザミをはじめとする棘のある植物も多いので、長袖・足首まで覆うパンツを推奨します。あと八丈島は雨が降りやすいのでレインウェアは必携です(降られると一気に気温が下がり、体温も奪われるので要注意です)。

私が歩いた三原山

ここからは筆者が2023年10月初旬、実際に三原山を歩いた日の歩行記をご紹介します(防衛道路登山口〜三原山のピストンルート)。

防衛道路入口〜NTT中継アンテナ施設

まずは防衛道路の入口を探すのですが、「防衛道路」を示す看板も「三原山はこちら」という看板もないので、発見は難しいほうに入ると思います。八丈島の大きい特徴だと思いますが、観光客向けの手取り足取りの親切な案内板は少ないです(個人的にはそれが逆に気に入っていますけれども)。

下の、「町立病院バス停」の近くから南に伸びている道路が最初の入口。分県登山ガイドか地理院地図は必携です。底土港などでは観光協会が出しているトレッキングガイドも入手できるので、複数の資料を参考にしたほうが良いです。

防衛道路入口

歩きはじめは、右側に東京電力の発電関係の施設があるようでした。

防衛道路入口

舗装された林道を「防衛道路登山口」を目指して淡々と登ります。登山口までは約1時間。

防衛道路

途中で「大滝の路・鉄壁の路」を左に分けます。この左の道は「鴨川林道」と呼ばれ、戦時中は防衛拠点となった「鉄壁山」などがあるようですが、八丈島で入手できる観光ガイドなどではこの道についての詳細情報は得られませんでした。訪れる人が少ないのかもしれません。今後の楽しみに取っておきます(地図を見る限りピストン、または悪路を経て三原林道に至るのかも)。

大滝の路・鉄壁の路との分岐(鴨川林道分岐)

防衛道路登山口に着きました。直進するとこの防衛道路はやがて八丈一周道路に至ります(伊郷名・いごうな、というバス停の近くに出ます。そこから登ってくるルートも考えられます)。

防衛道路登山口

ゆるやかな舗装の作業路を登っていくと、やがて「NTT中継アンテナ施設」に至ります。

NTT中継アンテナ施設

振り返ると八丈富士と八丈小島が美しいスポットです(下の写真は復路で撮影)。

NTT中継アンテナ施設

道中はアカコッコやカラスバトをはじめとする鳥の鳴き声が賑やかでした。

NTT中継アンテナ施設〜カルデラ縁

ここからが登山本番です。NTT中継アンテナ施設の左に、登山道への入口があります。目立ちませんが、道標があるのでわかります。

NTT中継アンテナ施設の脇道

基本的に下の写真のような石段が延々と続きます。石段は段差が一定のところもあれば、不揃いで大きいところもあります。こう見えて、意外にきつく感じました。足元が特に危険な箇所はないのですが、八丈島でのハイキングはやや湿度の高い気候も手伝ってか、地図から想像するよりも体力の消耗が大きいと感じます。

NTT中継アンテナ施設から続く石段

途中でも八丈富士と八丈小島が映えるスポットがあります。ただ、旅のパンフレットなどでは「絶景」とされているのですが、ススキをはじめとする植物が成長しまくっているのでジャンプしないとよく見えないかもしれません(カメラを頭の上に高く伸ばして苦労して撮影)。

NTT中継アンテナ施設から続く石段

このあたりから「藪こぎ」がはじまります。これなどはまだ良いほうで…

カルデラ縁に至る道

やがて注意しないと目に入ってくる高さの葉っぱが増えてきます。眼鏡・サングラスなど、とにかくアイウェアで目を保護する必要があるので気をつけてください。ジャングルです。

カルデラ縁に至る道

カルデラ縁〜三原山中継所

藪を抜けるとカルデラ縁に出ます。これは右手、南方向を見たところです。

カルデラ縁

下は南東方面の眺め。ガイドブックではここも「絶景」とされていますが、ガイドブックの写真が撮影された当時よりも植物がずっと育っているせいなのか、眺望はあまりないです。奥に見えているのがカルデラです(頑張らないとよく見えません)。一部、崖になっていてロープが張られています。落ちないように気をつけましょう。

カルデラ縁

ここからは遠くに見えている「東京都防災行政無線・三原山中継所」を目指します。その中継所までは稜線歩きです。10月初旬でこうした状態ですから、本格的な冬から初春にかけてのほうが眺望は良いかもしれないですね。でも、これでも十分きれいな道ですよね。いいな〜、と思いました。

カルデラ縁から三原山頂に至る稜線

歩いていると、腰から下にチクチクと刺激を感じます。痛い、とまでは行かないのですが、アザミの棘が刺さります。これも登山の楽しさではありますが、よく整備された登山道とは言い難いので服装はよく選んだほうが良いでしょう。

三原山のアザミ

野生のアシタバもたくさん生えています。密林感があって、とてもいい…

三原山のアシタバ

これは何の植物だろう… 八丈植物公園で以前購入した「八丈島の植物ガイドブック」という書籍を携行していたのですが(インターネットでは買えないレア本)、植物素人なので同定が難しいです。八丈植物公園にいるガイドさんに聞くと教えてもらえると思います。八丈島はシダ植物だけで200種以上見られると聞いたこともあり、植物観察好きの方にはたまらないと思いますよ。

三原山頂に至る稜線の密林

ようやく「東京都防災行政無線・三原山中継所」に到着しました。

東京都防災行政無線・三原山中継所

三原山中継所〜三原山頂

さて、ここから山頂までが最後の登りです。しかしその登山道の入口はどこにあるんだろう…

三原山頂に至る最後の上り

こ、これか〜!! 三原山、人気(にんき)のない秘境じゃないですか。しかし個人的にはこういうマイナー感のある道のほうが好きです。「道なし」とまではいきませんが、足元はよく見えません。こう見えて一部石段があり、しかも滑りやすいので要注意(湿った泥があります)。

三原山頂に至る最後の上り

ここからも盛大な藪こぎ。登る人、本当に少ないのかな… と思いました。でも、それが面白い。

三原山頂に至る最後の上り

ようやく三原山頂に到着。とても狭くひっそりとしたピークで、やはりガイドブックではここからの眺めも「絶景」などと紹介されてはいるのですが、実際には地味な印象でした。ピークハントにこだわる方には面白味はないかもしれません。しかし個人的には大満足。なお山頂には三角点がありました。

三原山頂

来た道を振り返ります。植物がもう少し背が低かったら、稜線はかなり映えそうですね。左側が2000年以上は噴火していないカルデラです。

三原山頂から振り返る稜線

八丈三原を歩き終えて

八丈三原を登ってみた最大の感想は、とにかく植生が豊かなのでその観察をメインに据えると面白いハイキングになるだろう、ということ。下の写真は三原山中継所の構造物から生えていたガクアジサイ。アプローチの防衛道路でも、あとこの記事では紹介していない三原林道でも(実際に歩いた)様々な植物が見られるので、私はそれらをゆっくり眺めるだけでも楽しめました。

三原山中継所のガクアジサイ

そんなふうに植物観察を楽しんでいると、この日は名所の「硫黄沼」や「唐滝」を見る時間はありませんでした。頑張って行こうと思えば行けたのですが、ガイドブック通りに「コースをこなす」つもりで詰め込んでも、あまり面白くないだろうと思ったのでした。

三原山登山道のシダ

八丈島は、八丈富士で1日。三原山のこのコースで1日。硫黄沼・唐滝をはじめとする名所めぐりでもう1日。三原林道歩きでもう1日。八丈一周道路巡りと市街地散歩でさらに1日… という感じで、全体を味わうには一週間は必要な土地だなぁと思います(どの島もそうかもしれませんけれども)。また、広く浅く、よりも、狭く深く、のほうが面白い島かもしれません。

八丈島はお魚をはじめとする食べ物も本当に美味しいですし、人も気さくで、優しい。是非一度は訪れてみて下さい。真夏は湿度が高く、雨がよく降る島ですが、本州よりも空気がきれいなので不快な暑さ・気候とは感じません。独特な魅力のある島です。私は、また行きます。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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