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ハイキングコース紹介東京都の山

新島の宮塚山を歩く(2) 何気なく立ち寄った「新島中継局」には思いがけない風景が隠されていた【海からも見える電波塔】

新島の宮塚山歩きの記事、第2回です(次回で完結します)。第1回では、新島の観光パンフレット各種でも案内されている富士見峠コースをご紹介しました。しかし、富士見峠展望台の先にも道は続いていました。この先にはどんな風景があるのだろう? 2024年12月、筆者は何の予備知識もないまま歩き進めることにしました。

富士見峠展望台の先に続く道(2024年12月筆者撮影)

歩いて行ける宮塚山の最高点を目指す

歩きはじめるとすぐ、左手に電波塔が見えてきました。新島の前浜海岸からも、東海汽船の大型客船・さるびあ丸からも見える複数の塔です。手元の地理院地図によればあのエリアは標高426.5m。三角点も埋まっているようです。宮塚山のピークは432mですが、山頂には行けません。そのためあの電波塔エリアが「一般人でも歩いていける宮塚山のピーク」になります。

新島中継局への道

■ 電波塔の地理院地図上での位置はこちら。電子版に標高の記載はないものの、紙版の1/25000地図には三角点とともに「426.5m」と記されています。紙版には電子版にないディテールがあることを今回知りました…

冬の宮塚山を歩いていたのは、この日私一人だけでした。壁面からあまりに立派なイソギクが生え育っていたので、一枚パチリ。私は伊豆諸島でイソギクをよく見かけるようになり、以来、大好きな花になりました。大島、三宅島、神津島、どこでも大量に見られます。葉っぱも花もかわいい。

新島中継局への道

今日も誰もいない、貸し切りだ!と思っていたところ、背後からルルルル…とクルマの音が静かに聞こえてきました。有害鳥獣パトロールか、電波塔関係の人かな? と横を見ると、白黒パンダ模様のクルマが停まりました。お巡りさんがスーッと助手席の窓を下げてきたので、ひょっとして止められるのだろうか? と心配しました。でも、通行止めって書いてなかったし…

新島中継局への道

するとお巡りさんは微笑みながらも無言で、片手で飲み物を飲む大きい仕草をしました。すぐに意味を理解したので「(水は)持ってます、ありがとうございます」と背中のザックを指して答えると、やはり無言のまま笑顔で頷いて先に進んでいきました。水を持たずに山歩きをする要注意観光客ではないか、島に危険をもたらす人物ではないかとチェックしていたのだろうと思います。

やがてそのパトカーはこの三叉路の左側から降りてきました。駐在さんと会釈を交わしたあと、私もこの坂に入って行きました。地図によると、ここが電波塔への入口です。

新島中継局への道

新島中継局

坂を登ると、そこは「新島中継局」と呼ばれるエリアでした(帰宅してから調べて知った)。洋上のさるびあ丸から私が視認できた電波塔の数は4つだったのですが、現地には小さいものも含めると6基ほどありました。

新島中継局

新島中継局は、新島・式根島は勿論のこと三宅島と八丈島にもテレビやFMラジオの電波を送出しているそうです。三宅島の防災無線設備らしきものもあったので、三宅島がいつか再噴火する時に重要な役割を果たす場所なのだろうとも思いました。伊豆諸島における重要な基幹インフラです。

新島中継局

人が常駐しているわけでもなく、また「ここは新島中継局です!」という看板もなく、立入禁止を示唆する板も全くありません。

ゆるやかな舗装の坂道を登っていくと、白い基部にNHKロゴが描かれた電波塔に至りました。電波塔のなかでもいちばん西側にあったのがこのNHK塔です。

新島中継局

フェンスの先に

舗装路はこのNHK電波塔の手前で終わり、先には白砂の斜面が続いていました。そうか、ここで行き止まりか。と一瞬思ったのですが、フェンスの向こうまで足跡が続いています。追ってみると…

…えっ!?

新島中継局

ええっ!! な、なんだこの一帯は!?

新島中継局

き、聞いてないよ!! ここはすごいところじゃないか! そして洋上に見えるあの白い船、あれはさるびあ丸だ!

新島中継局

な、なんじゃこりゃー!! 確かに富士見峠展望台からの眺望のほうがコンパクトにまとまっていて「完成されている名所」感はあるけれども、開放感・スケールの大きさ・手つかずの大自然感はこちらがはるかに格上!

新島中継局

新島本村の姿は隠れてしまうものの、宮塚山の南西斜面がよく見えます。奥から手前にかけて神津島・式根島・地内島と続いています。こ、これはすごい…

新島中継局

そしてこの一帯、足元は白砂の砂丘のようでした。ものすごく広くはないけれど、砂丘と呼んでも差し支えない雰囲気でした。まるで山の上に前浜海岸のビーチがやってきたかのようだ… 石山トレッキングコースにも近い風景はあるものの、「砂感」はこちらが上です。

新島中継局

ここ、すごい… こんな素晴らしいスポットが隠されていたなんて…

新島中継局

しかし、新島の公式観光情報にこの場所が登場しない理由もすぐに理解しました。ここは観光スポットではなく、島の重要インフラの敷地がたまたま絶景スポットになっているだけなのです。しかも、少し歩くと写真のような険しい崖です。ハイキング経験のない方がなんとなく「ぎょさん(伊豆諸島で人気のビーチサンダル)」でノリでここまで来たらとても危ない。

新島中継局

立入禁止になっていないだけでも本当にありがたいところです。普通に絶景です。式根島の唐人津城に匹敵する感動がありました。崖下にはエメラルドグリーンの新島ブルーな海も見えています。

新島中継局

イソギクも大量に生えていて、こんな可愛らしい鉢植えのような群生も見かけました。日当たりが良く水はけの良い乾燥気味の場所を好むイソギクにとって、ここはまさに絶好の生息地でしょう。

イソギク

洋上に見えているのはさるびあ丸、時刻は12時15分。前浜港を11時55分に出港し、利島に向かっているところです。さるびあ丸からよくこの場所を眺めていたのを思い出し、嬉しくなりました。

新島中継局

このミニ砂丘のようなエリアは扇状に広がっていて、少し散歩できました。伊豆大島・三原山の赤ダレのような雰囲気です(ここは白ダレとでも呼ぶべきか)。

新島中継局

八丈島で言うなら、八丈富士山頂から三原山方面を眺めているようなものです。新島を訪れる方の大部分は海のレジャーが目当てかと思いますが、ハイカーならこの新島中継局に立ち寄らない手はないでしょう。東には三宅島と御蔵島ももちろん見えています(八丈島だけは本当に天気が良くないと見えないですね)。

新島中継局

さて、新島と式根島を回った今回の旅の帰路、さるびあ丸の展望デッキからあらためて新島中継局をじっくり眺めました。下は広角レンズで撮った写真の部分拡大ですが、やはりはっきり見えている電波塔の数は4本ですね。ミニ砂丘の下の崖の様子もよくわかります。

さるびあ丸から見た新島中継局

観光パンフレットで気軽に紹介できない場所になっている理由は、実際に行ってみて「なるほどなぁ」と容易に理解できました。しかし、まさかあの崖上まで行けるとは思っていませんでした。

というわけで、もし低山ハイキングが目当てで歩行の心得もある方であれば、新島の宮塚山は富士見峠展望台の先まで足を伸ばしたほうが断然おもしろいでしょう。私はこの後、電波塔の先に続く道も歩いてきました。それについては次回の記事、新島の宮塚山を歩く(3) 林道の果ての謎の構造物を目指して【新島ロラン局】でご紹介します。

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