ハイキングコース紹介埼玉県の山

物見山と高指山:ピークハントにこだわらず純粋に歩く楽しみに浸れる中距離ハイキングコース ピクニックにも至適

物見山・高指山とは

物見山(ものみやま)は埼玉県毛呂山町(もろやままち)、奥武蔵自然歩道沿いにある標高375mの低山です。物見山という名とは裏腹に山頂からの展望はほとんどないのですが、一等三角点が埋まっていることで有名です。

物見山・山頂

近場にある五常の滝や宿谷の滝、鎌北湖などの名所と繋いで歩いたり、日和田山も絡めて歩かれることが多いと思います。山自体は地味ですが道は歩きやすく、散歩的なハイキングにぴったり。

高指山(たかさすやま・標高332m)は物見山と日和田山の中間地点にあり、かつては電波塔が建っていましたが現在は取り壊され、公園としての整備が進められています。山頂自体は小さいピークですが、物見山より少しだけ眺望はあるので立ち寄ってみたいところです。

高指山・山頂

この記事では西武池袋線・武蔵横手駅を出発し、五常の滝・北向地蔵を経て物見山へ。さらに高指山・日和田山へと至るライトなウォーキングコースを紹介します。高麗駅に下山する場合、距離約11km、4時間弱のコースとなります。ハイキング初心者の方にもおすすめできます。

物見山・高指山へのアクセス情報

物見山へのアプローチは日和田山から、宿谷の滝や鎌北湖からなどいくつか考えられますが、この記事で紹介するコースでは西武池袋線・武蔵横手駅を出発します。駅前からすぐに良い雰囲気の林道歩きがスタートします。

■ 物見山周辺の地理院地図(拡大・縮小できます)

帰りは日和田山から巾着田に下山し、高麗駅へ。あるいは巾着田から高麗峠を経て天覧山・多峯主山まで距離を伸ばすのも良いでしょう。多峯主山からさらに柏木山・龍崖山と縦走し、そのまま飯能駅まで歩くと大満足ロングコースになります。

物見山・高指山ウォーキングの装備について

今回ご紹介するコースはかなり歩きやすいので軽装・ローカットシューズでも大丈夫。ただし日和田山で岩場を通るのなら、ミッドカット以上のシューズを推奨します(巻き道なら不要)。急登・急下降もほぼないため、長距離コースに仕立ててスピードハイクするのでなければ、トレッキングポールも不要です。ただ、快晴でなければレインウェアは持っておいたほうが良いです。

約4時間と短めの行程なので、コーヒーを淹れたりクッカーで料理したりと、ピクニック的な休憩を楽しむ装備を持ってくるとより楽しめると思います。

私が歩いた物見山〜高指山コース

ここからは2023年5月下旬、筆者が実際に武蔵横手駅〜物見山〜高指山〜日和田山と歩いた日の模様をお伝えします。

武蔵横手駅〜五常の滝

武蔵横手駅を出るとすぐに国道299号です。駅前で右折しほんの少し東進すると、道向かいに「五常の滝」方面を示す看板が見えてくるので、ここに入ります。トラックの往来が多いので、横断時は気を付けましょう。

武蔵横手駅前の道

この道は「関ノ入林道」といい、関ノ入沢沿いの舗装路です。舗装の林道、と聞くと退屈なイメージがあるかもしれませんが、ここの杉林は適度に伐採されており、歩きはじめるとすぐに清涼な空気に包まれる、とても良い道です。曇りの日の朝はよく霧が出ていて幽玄な雰囲気にもなります。

関ノ入林道

基本的に杉の植林なのですが、東側の斜面にはシダ系の植物がたくさん生えています。柏木山みたいですね。花や昆虫も多く見かけます。どこかに向かうための退屈なアプローチ道路ではなく、もう既に楽しみがはじまっている。そんな道です。

関ノ入林道のシダ

40分ほど歩くと右手に「五常の滝」の受付が見えてきます。月・火・水がお休みなので、見学したい場合は木金土日と祝日を選びましょう。開場は9:00〜14:20。冬季は休業です。

五常の滝

五常の滝〜北向地蔵

五常の滝を後にして進むと、こんな大きい切り通しがあります。岩尾根が東西に続いていたのでしょう。このあたりから雑木林的な雰囲気もたまに出てきますね。

関ノ入林道の切り通し

やがて分岐があるので、ここを左折。ハイカーの通過のみが認められている徒歩道です。

北向地蔵への分岐

道は陥没しているところもありますが、特に歩きにくくはありません。この道にも大きい岩がいくつかあり、ここでは竹林も見られます。

北向地蔵への分岐

一度車道を横切ってから、徒歩道が再開します。

北向地蔵への分岐

登り着いた177m地点に北向地蔵尊があります。手前の舗装路は奥武蔵グリーンラインです。

北向地蔵

北向地蔵は休憩適地であるだけでなく、18世紀後半の「天明の大飢饉」についても学べます。写真の下にリンクがある記事で詳しく紹介しているので、是非そちらもお読みいただけると幸いです。

北向地蔵

■ 北向地蔵はおもしろい。日本史にも世界史にも思いを馳せられるスポットです

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北向地蔵〜物見山

北向地蔵の前で、物見山方面と鎌北湖方面への道が分岐します。今日は物見山方面に向かいます。

物見山と鎌北湖方面への分岐

途中で舗装路を渡ります。案内板が目立つので道に迷うことはないでしょう。ここにも立派な切り通しがあります。日和田山までずっとこういう岩が連続しているのでしょうね。植生は、杉の植林が自然林に変わりつつあるような雰囲気が色濃くなってきます。

切り通し

地味ながらも空気がきれいな尾根道を歩いていくと、左手に良い感じのテーブルとベンチがあります。こういうところでこまめに休憩するのが楽しいハイキングコースです。森林浴効果抜群。

休憩スポット

やがて物見山山頂と高指山の分岐に出ます。日和田山の金刀比羅神社までこのような巻き道が常にあるので、あまり登らずに歩き続けることもできます。ただ、それほど大変な登りはないのでピークも見ていきましょう。

物見山頂と高指山の分岐

物見山の山頂です。丸太のベンチがたくさんあり、2〜30人はくつろげる縦に広々としたピークです。日差しも日陰もあり、休憩しやすいです。

物見山頂

ただし展望はほぼ皆無。天気の良い日でも木に遮られ、遠くはほとんど見えません。

物見山頂

山頂から北東にちょっとだけ進むと、一等三角点が埋まっています。一等三角点は全国に1000個弱しかないレアものなので、記念に見付けてみましょう。

物見山の一等三角点

物見山〜高指山

物見山を後にし、高指山を目指します。やがて駒高(こまだか)という集落に出ます(地名は「高麗・こま」に由来するのかな?)。このあたりはいつ訪れても野鳥の声が賑やかです。双眼鏡を持ってきて粘るとバードウォッチングを楽しめます。ここの野鳥は人馴れしているのか、いつも近くで大声で鳴いています。

駒高集落

車道を左折すると「ふじみや」さんというお店があります。自販機でジュースを買えるほか、中でカップラーメンも売っています。不定休。すぐ近くには立派な公衆トイレと見晴らしの良いあずまやもあります。このコースは休憩に良いポイントが多いのが特徴です。大きい山に登ったり、せかせか歩くのに疲れてきたら心身ともにリセットできると思います。

ふじみや

下り基調の舗装路を進むと、やがて高指山への分岐に出ます。ここはかつて鉄塔があったのですが、数年前から公園・休憩所への再整備が進んでいます。一時期は立入禁止でした。

高指山頂への道

その先に高指山の小さい山頂があります。山頂標識には「令和3年10月1日指定」とあり、かなり新しいものです。展望は物見山よりは良いですが、あまり期待しないほうが良いです。天気が良い日なら山頂下の芝生広場に敷物を敷いて休憩するのも良いでしょう。

高指山頂

高指山〜日和田山

それでは日和田山を目指します。左は、道標は出ていませんが日和田山頂に至るショートカットです。右は巻き道。疲れていなければ登っていきましょう。このあたりは完全に雑木林です。

日和田山頂への道と巻き道

先の巻き道と合流したあとに、さらに登ります。ここはチャートのゴツゴツした岩が増えてきて、このコースで唯一山登りっぽい雰囲気になります(あと日和田山からの男坂も)。

日和田山頂直前の岩場

登り着くと宝篋印塔のある日和田山頂です。

日和田山頂の宝篋印塔

眺望が良く、物見山同様に適度な日差しと適度な日陰があり、やはり休憩適地。週末は大変賑わっています。

日和田山頂からの眺め

金刀比羅神社に下り、巾着田を眺めます。ここからは巾着田を散歩してから高麗駅に行っても良いですし、巾着田の「ドレミファ橋」から高麗峠に向かい、天覧山まで歩いても良いでしょう。メッツァ外周コースと接続するのも手です。気分次第で様々な楽しみ方ができるコースだと思います。

金刀比羅神社

物見山・高指山ともに、ピーク自体に大きい特徴や魅力はないかもしれませんが、ピークハントを重視するあまり道中の風景を楽しむ余裕がないような山歩きに疲れてきたら、このコースを歩いてみてはどうでしょうか。エキサイティングな道ではまったくありませんが、とにかく空気が新鮮な感じがしますし、たまにシカやカモシカにも遭遇します。まったり・のんびり系の癒やしコース。

やはり食事やお茶を楽しむピクニックを絡めると魅力がより高まるコースかな、と思います。あとは朝寝坊した日でも無理なく歩き通せる距離・時間なのも良いところです。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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