カメラ関連登山用品の話題

フィルムカメラで撮る山旅:新島・式根島の写真15枚 OLYMPUS 35 DC・1300万画素スキャン・2024年12月撮影

この時代、フィルムカメラで山旅の写真を撮っている人はほとんどいないと思います。私自身は昨年から、かなり久しぶりにフィルムカメラを(たまに)使うようになりました。この記事ではフィルム写真がどんな雰囲気に仕上がるのか、見ていきたいと思います。

撮影に使ったカメラ

この記事に掲載しているフィルム写真はすべて、OLYMPUS 35 DCという50年前のカメラで撮影しました。フィルムカメラの場合、デジカメと違ってカメラ本体に画質そのものを左右するような機能差はなく、画質はレンズとフィルムの品質によって決定されます。このカメラのレンズは固定式単焦点の40mm F1.7。フィルムはFUJICOLOR 100とKodak Gold 200を使用しました。

OLYMPUS 35 DC

OLYMPUS 35 DCはフォーカスだけ自分で合わせ(レンジファインダー機)、あとはシャッターボタンを押すだけのカメラです。自動露出です。そのため被写界深度をコントロールするために自分で絞りを決める、といったことはできません。それだけに「何を撮るか、どういう構図で撮るか」を考えまくるのが面白くなってくるカメラです。

OLYMPUS 35 DCの露出計が壊れたと思ったら…意外なところに原因が!【50年前のフィルムカメラ】
下はOLYMPUS 35 DCというヴィンテージ・フィルムカメラです。1971年発売開始のレンジファインダーで、この個体も50年以上前のものと思われます。固定式のレンズは40mm F1.7、露出はプログラムオートで、撮影者に必要なのは構図を...

フィルムで撮った2024年の新島

それではOLYMPUS 35 DCで撮った写真を見ていきましょう。下は2024年12月に訪れた新島・前浜海岸にある女性のモヤイ像です。巻き貝を耳に当てて音を聞いているように見えます。島中にたくさんあるモヤイ像の中でも、写実的な作品はほぼこれだけではなかったかと思います。像の素材となっているコーガ石とフィルム、どちらも粒子状の質感があってその相性が良いのか、私は大満足の仕上がりになりました。フィルムはKodak Gold 200。

女性のモヤイ像

これも新島の写真。宮塚山新島中継局から西の海を眺めたところです。東海汽船のさるびあ丸が新島から利島に向かっています。山旅で普段メインで使っているデジカメのレンズが換算18mm(マイクロフォーサーズのLEICA DG Summilux 9mm/F1.7)なので、船はこの大きさで写せません。35 DCの40mmという焦点距離は肉眼でのサイズ感に近く、より主題を強調できます。これはFUJICOLOR 100を使用。

新島中継局

これも新島中継局で撮ったものです。この砂土の丘の質感も、フィルムとの相性が非常に良いと思いました。やはり粒子状の被写体との相性がとりわけ良いように感じます。FUJICOLOR 100。

新島中継局

これも新島中継局。自動露出なのでF値は不明ですが、晴天時にFUJICOLOR 100で撮影しているのでF8以上だろうと思います。それでも崖の向こう側がいい感じにボケています。左手前側の土はカリカリに近いシャープな質感。このF.ZUIKO 40mm F1.7というレンズ、使うほどに名玉ではないかと思わされます。

新島中継局

これも同じ場所、FUJICOLOR 100。この記事の写真はどれも、クリックすると最大幅1280pxで表示されます。拡大すると崖と藪のあたりのディテールが緻密で驚かされます。なおこれらの写真はどれもカメラのキタムラで高画素(1300万画素)でスキャンしてもらったものをMacでこのブログ用に縮小したものです。

新島中継局

こちらはKodak Gold 200で撮った新島港(前浜港)の夕景です。この写真も、個人的には決して悪くない画質だとは思うのですが、フィルムは現在のデジカメに比べると暗所ではノイズが悪目立ちしやすい感じがします。夕景や夜景を上手に撮るのは難しいと思いました。

前浜港(新島港)

これらの写真はほぼ「撮って出し」ですが、一部はMacの「写真」アプリで「ブリリアンス」と「明るさ」のみ、ほんの少しだけいじったものもあります(シャドーと全体の露出修正のため)。それでもシャープネス等の他のパラメーターは一切いじっておらず、OLYMPUS 35 DCがどんな描写をするカメラなのかが伝わるのではないかと思います。

フィルムで撮った2024年の式根島

これは式根島の神引展望台から見下ろした神引湾、FUJICOLOR 100で撮影。奥にうっすらと利島や大島のシルエットが見えています。

神引展望台

ここから3枚は唐人津城の写真です。フィルムはFUJICOLOR 100。こうした風景はデジカメでカリカリにシャープに撮っても面白いですが、細部まで解像していながらも柔らかさが残るフィルムの描写もまた、味わい深いものだなと思わされます。

唐人津城

フィルムもデジカメに負けていない、という話ではなく、使われているテクノロジーが全く別物なのです。

唐人津城

下の写真のおもしろいかたちをしたコーガ石を見ると、35 DCのこの40mm F1.7レンズにはいわゆる「3Dポップ感」(被写体の輪郭が強調されて浮き上がってくるような感じ)があるように感じます。むかしOM ZUIKO 40mm F2というレンズを使っていたこともありますが、これほど良くはなかったです。

唐人津城

下は御釜湾遊歩道の第二展望台から撮った神津島。FUJICOLOR 100は発色が自然で使いやすいフィルムだなと思います。Kodak Gold 200も決して悪くないのですが、OLYMPUS 35 DCは最高シャッター速度が1/500、最小絞り値がF16なので、ISO100フィルムでないと快晴の昼間ではやや露出オーバーになることもあります(極端に失敗したことはないけれど)。

御釜湾展望台

これは第三展望台から撮った松とリアス式海岸。FUJICOLOR 100。デジタル写真に比べると少し「もやっ」とした印象を受けるかもしれませんが、よく見ると細かいところまで解像されています。ハイライトは少し飛んでいますが、失われているものはほとんどありません。

御釜湾展望台

ここから3枚はKodak Gold 200で撮った写真です。下は式根島の野伏港。新島に帰るため連絡船にしきを待っている時に撮りました。これはさるびあ丸などの大型客船が着くほうの埠頭です。これは個人的に、いかにもフィルムらしい写真になったと感じています。あとこのカメラの良さが出ている写真かなとも思います。タイヤロープのこの独特な立体感、むかし使っていたSIGMAのFoveonセンサーのカメラを少し思い出しました(初代DP2を使っていた)。いいレンズだなぁ。

野伏港

これも野伏港。ピントは中ほどの大きい石に合わせてみました。コダックのフィルムは少し黄色っぽくなると昔からよく耳にするのですが、Gold 200は確かにFUJICOLOR 100に比べると少し黄色っぽい発色になるような気もします(PCでいくらでも補正できますが、これは調整していません)。

野伏港

しかし下の野伏港の灯台は、Gold 200の持ち味がうまく出た写真になったのではないかと自分では感じています。FUJICOLOR 100で撮っていたら、もう少し賑やかで鮮やかな表現になったように思いますが、この「ちょっと寂しい感じ」が気に入っています。若干黄色っぽいからかな、と思います。

野伏港

40mmレンズだと、先に掲げた埠頭のタイヤやこの灯台のように、主題を大きめにクローズアップした写真のほうが面白くなるような気がします。

贅沢品だから集中して撮る

今の時代、フィルムカメラはお金がかかります。カメラ・レンズ自体は非常に良いもの驚くほど安く買えるのですが、35mmのネガフィルムはこの記事を書いている2025年1月時点で36枚撮りの実勢価格が1500〜2000円。現像代が1000円。L板を同時プリントするとプラス1000円。スキャンしてCDに焼いてもらうと1000円(キタムラの600万画素)。高画素(1300万画素)はさらに1000円のオプション料金がかかります。

この記事で紹介した写真は「カメラのキタムラ」にて現像+スキャン(高画素オプション付き)を依頼し、フィルム1本あたり3000円かかりました。加えてフィルム代が1500円。つまり36枚のフィルム写真をPCで扱う場合、合計で4500円もかかるのです。

フィルム写真を撮ることは贅沢な行為になりました。そのため、撮影時も「本当にいい写真、撮る価値のある写真」を撮ろうと考えるので、いつもの自分からは出てこない写真が撮れることもあります。それもまた楽しいところです。

■ この記事はお役に立てましたでしょうか? もし当サイトの記事が何らかのお役に立てたようでしたら、日用品などのお買い物の際など、サイト内のAmazonリンクからお店に行っていただけると大変励みになります

タイトルとURLをコピーしました