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冬山を登っていたら寒さでE-M5 mark IIIのシャッター幕が開かなくなった【原因と対策】

ハイキングや登山で、筆者はここ数年OLYMPUS OM-D E-M5 mark IIIというカメラを愛用しています。小さくて軽くて防塵防滴と、まさに山好きのためのカメラです(後継機はOM-SYSTEM OM-5。しかしハードウェアはほぼ同じのマイナーバージョンアップ製品)。

OLYMPUS E-M5 mark III

ハイキング・登山で愛用しているOLYMPUS E-M5 mark III

しかし先日、登山中に電源を入れても背面モニターは真っ暗。EVFに切り替えても真っ暗。電源を落として再投入しても真っ暗なので、レンズを外してみたところシャッター幕が降りたままになっていた、という状況に陥りました。こんな不具合は、はじめて経験します。まさか故障してしまったのか…

標高1304m 気温0度

その日は埼玉県・横瀬町の人気の山、武甲山を登っていました。不具合が発生したのは1304mの山頂まで10分ほどのところで、標高も数十メートルしか違わない場所だったと思います。気温は、山頂の第一展望台でちょうど0度くらいでした。カメラは、横瀬駅からずっと外に出して歩いてきたので、急激に冷やしたわけではありません。

武甲山頂(第一展望台)

武甲山頂(第一展望台・2023年1月撮影)

私はバッテリーを節約するため、撮ったら電源を落として、しばらく歩いてまた電源を入れて撮る、というスタイルです。この日もそのように撮影していました。気温が低かったので、満充電状態のバッテリーでも残量インジケーターは4つのうち2か1(50%〜25%)になっていました。しかし、これは寒い日ではいつものことです。

いつもと違ったのは、ふたたび写真を撮ろうとして電源を入れても、映像が表示されなくなったこと。背面モニター、ファインダー、どちらに切り替えても真っ暗で、レンズキャップを外し忘れた時にまさにそうなりそうな状態です。絞り優先モードで撮っているので、シャッタースピードが長時間(数字は忘れましたが数秒)になっていました。

もちろんレンズキャップは外れています(登山中はそもそもキャップは付け外ししません。レンズガードのみ)。嫌な予感がして電源を入れ直しましたが、症状は変わらず。バッテリーを外して入れ直しましたが変わらず。

センサーからモニター・EVFへの出力経路がやられたのだろうか? ここでふと思い付いてレンズを外してみたところ、シャッター幕が下りたままになっていることがわかりました。

写真が撮れないと困るので、暫定的な解決法をあれこれ試しました。唯一効果があったのは、露光時間が数秒になってしまっても、とにかくレリーズして1枚撮ってしまうことでした。1枚撮ってしまえば、その後は数枚問題なく撮影できました。しかし、また画面がブラックアウトします。また1枚を無駄に長秒時露光でレリーズ。するとまた数枚撮れる… という具合でした。

この症状は、その後下山してからは発生しなくなりました。山から戻った後も、自宅ではまったく発生していません。

原因は低温だけではないと思う

思うに、原因のひとつは明らかに「低温」です。しかし不思議なことに、この日よりもっと気温が低い日に同じ武甲山に登ったことがあるのですが(山頂で氷点下)、その時はこの不具合は全く発生しませんでした(なお、E-M5 mark IIIは雨中でも-10℃でも問題なく使えるとされている、耐候性の高いカメラです。だからこそ登山で使っています)。

武甲山頂からの眺め

武甲山頂からの眺め(第一展望台・2023年1月撮影)

すると原因は「低温」だけではなさそうです。低温に加えて、湿度や気圧といったその他の気象条件(このカメラは湿度30%が使用可能下限)、カメラ本体の基盤の劣化とか、バッテリーの劣化とか、使っていたレンズとか(電力消費量が違うだろうから)、様々な条件が重なった結果ではなかったかと考えています。湿度は、もしかすると30%を切っていたかもしれません。

不具合を起こした日に使っていたレンズはSUMMILUX 9mm/F1.7で、それ以前、ZUIKO 12-45mm F4 PROズームをもっと気温が低い日に使っていた時は、この問題は発生していません。レンズ(との相性)も原因の1つになっている可能性は、排除できないでしょう。

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今後も同じ症状が発生したらイヤなので、帰宅後にネットで調べてみると、全く同じと思われる症状を経験している方の報告を数件、発見しました。修理に出したところ電子基板の故障・不良と判断され、基盤を交換してもらったが症状が再発した。その後はシャッターユニットの故障と判断され、ユニットを交換してもらったりしたそうです(その後どうなったのかは不明)。

私の想像では、シャッターユニットの特定ロットの不具合も考えられなくはなさそうですが、E-M5 mark IIIの設計に由来する誤動作ではないかと思います。つまり、仕様ではないかと思っています(E-M1系ではこの不具合はあまりないようです)。

私の個体はもう保証期間が過ぎているので、修理に出してシャッターユニットを交換してもらっても3万円ほどかかると思います。それでいて完全に治る症状だとも思えないので、本当に撮影が大事な時は今後、冬山にはバックアップとしてLUMIX GF5のようなEVFレスの小型のマイクロフォーサーズ機も持っていくつもりです。

いくつかの解決法

下りたままのシャッターを上げるには、まずはとにかく1回でもシャッターを動作させる必要がありました。結果的に、長秒時露光になります。私はその時思いつきませんでしたが、MモードかSモードにして短い露光時間を選べればそれが早くて良さそうです。

あとは冷えていないバッテリーに交換すること。今回の不具合時、予備バッテリーに交換して試すことはしませんでした。ザックのウエストポケットにいつも1個入れてあるのですが、すっかり忘れていたのです。想像ですが、たぶん入れ替えたら動作したと思います。しかしすぐに冷えて、また同じ症状を起こしそうです。冬の予備バッテリーは多目に持っておいたほうが良いですね。

動きのない風景だけ撮るのであれば、電子シャッターを選んでおくのも対策法のひとつでしょう(ドライブ設定で「静音」を選ぶ)。これならメカシャッターは動作しないので、今回のような不具合は回避できるはずです(シャッターが降りないのだから)。勿論、動きものを撮る時はローリングシャッター現象が出たり、ISOが3200を超えるようだとノイズが出たりはします。

それにしても、オリンパスのカメラが気温0度程度でこんな不具合を起こしてしまうとは少々意外でした。今後はだましだまし使っていくしかなさそうです。

後日談

この記事の公開後、武甲山より少しだけ標高の高い埼玉の熊倉山(1427m)をE-M5 mark IIIとともに登りました。

熊倉山(2023年1月30日)

熊倉山(2023年1月30日)

出発時の気温は最寄りの駅で-7度ほどだったと思います。熊倉山頂に着いたのは11時40分頃だったので気温は少し上がりはじめていたかもしれませんが、氷点下だったのは間違いないと思います。はじめてシャッターの不具合が出た武甲山の時よりはるかに寒い日でした。

しかし登頂直前までシャッターの不具合はなく「あれっそういえば今日は固まってないな。前回はたまたまだったのかな?」と思ったのですが、山頂で休憩しつつ冷え切った空気の中でゆっくり写真を撮っていたところ、やはり画面がブラックアウト。武甲山の時と同じでした。

今回はモードダイヤルをMに変更し、シャッタースピードを適当に1/60や1/200といった比較的速いものに設定して黒い画面のままレリーズさせました。するとレリーズが開始するまで1秒程度のタイムラグはあるのですが(辛抱して待つ)、その後は指定の数字でシャッターが動きました。この復旧方法が時間的には早いと思います。

その後、山頂でもう1度ブラックアウト。下山中、半分凍った沢で氷柱の写真を撮っていたら数回ブラックアウト。超広角レンズで氷に寄っていた時でした。下山後は全く問題なし。

なおこの日はオリンパスの純正バッテリーBLS-50を使用。前回の武甲山ではROWAのBLS-5/BLS-50互換バッテリーを入れていました。この不具合はバッテリーの品質とも関係があるのかなと考えていたのですが、結局純正バッテリーでも大差ないことがわかりました。寒さを含む様々な原因で十分な電圧が得られなくなると、E-M5 IIIではこの症状が出るのでしょう。

氷点下で長時間撮影しなければならないような時は、底にカイロを入れたカメラケースや布で包むなどの工夫をしたほうが良さそうです。高所による気圧も少し関係していたりするのでしょうか。結露も関係ありそうな気がします。

著者
ヤムパパー

秩父・奥武蔵・奥多摩・伊豆諸島がホームグラウンドの低山ハイカー。動植物の写真を撮りながら歩くのが好き。日帰りメイン時々テント泊。著述家・翻訳家

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